みなさんは添付した写真のような巨大なダンプトラックをご存知でしょうか。この写真は、筆者が関与する建設会社が請け負った大規模造成工事の現場で働く小松製作所製のHD465型を捉えたものです。最大積載量55t、エンジン排気量23,000cc、タイヤの直径は2mを超えるなど、とにかく巨大で当然のことながら公道を走ることはできません。したがって、そのリアルな姿はダムや空港などの大規模な造成工事現場でしかお目にかかれません。
建設会社の監査にあたっては、請け負った工事現場が実在するかどうかの確認や固定資産台帳に計上されている機械や車両などの稼働状況を確かめる必要があります。いわゆる「現場視察」や「現物実査」といった監査手続きですが、そこで対面したのが添付した写真のダンプトラックです。運転席にはステップを上がって乗り込まなければならず、その高さは建物の2階部分にも匹敵します。しかし、運転席周りは意外にも普通の2トントラックのそれと変わることがなく、ハンドルがあって、オートマチックのシフトレバーがあって、ライトやワイパーなどのスイッチ類がほぼ定石通りに並んでいます。これなら運転できると思ってスタートキーに手を伸ばしたのですが、さすがに制止されました(笑)
さて、この巨大なダンプトラックは「機械」なのでしょうか、それとも「車両」なのでしょうか。小松製作所のホームページでHD465型は「建設機械」に分類されています。有力メーカーの一つであるキャタピラー社のホームページでも同種のダンプトラックは「建機」に区分されています。ダンプトラックという名称、あるいは筆者が運転席に着座した感想からは「車両」とも考えられるのですが、ここは少々悩ましいところです。
実は、この巨大なダンプトラックが「機械」なのか「車両」なのかをめぐって納税者と税務署長が争った事例があります。「車両」であるとした税務署長の処分に対して、国税不服審判所は「機械」だとする納税者の主張を認めたのですが、なぜ、こんなことで争いになったかといいますと、法人税の特別控除の対象が「機械及び装置」とされているところ、この巨大ダンプトラックが控除の対象になるかどうかで争いになったというわけです。そもそも、租税特別措置法による政策減税は投資に対するインセンティブを通じて景気を浮揚することが目的なのですから、それが機械か車両かといった区分で争いになる前に制度設計の段階で対象を明確にしておけばよい話です。現場を知らない官僚と追認するしか能のない国会議員が作る法律の歪みが露呈した一例といってもよいでしょう。