先週、ちょっと珍しい事件が報じられていました。先々月、奈良税務署の50代の副署長が近畿税理士会奈良支部の役員との懇親会の席上で酒に酔って女性税理士に暴言を吐き、背中などを複数回たたいていたことが判明したとして、大阪国税局はこの副署長を異動させ、減給10分の2(3カ月)とする懲戒処分にしたとのことです。若気の至りで済まされる年齢でもなく、署のナンバーツーの立場にある者の振る舞いとしては少々首を傾げざるを得ません。
税務署幹部と税務署単位で設けられている税理士会の支部役員とは、その立場は異なるとはいえ、協力関係にあることも事実です。とりわけ確定申告期における税務支援業務、つまり納税者の自主(自書)申告のサポートなどは税理士会の協力なしでは成り立ちません。それが、報道によると「元副署長は税理士会の協力を得て開催している確定申告の相談会の運営について不満があったという。女性税理士は税理士会側の担当だった」とありますから、暴言や暴力はNGとして、事件の背景には一言では言い表すことのできない根深い何かがあったのではないかと勘ぐっています。
一方、一昨年の1月には、税務調査に訪れていた和歌山税務署の職員に対して、税理士が「手続きが遅い」などと腹を立てて暴力をふるったとして、公務執行妨害の疑いで逮捕されるという事件もありました。これも手続きが遅いぐらいで殴ったりはしないでしょうから(逆に手続きが遅ければ、調査の効率は落ちるのですから、それはそれで歓迎すべきともいえます)、調査の現場で何かがあったと考える方が自然といえます。
というわけで、いずれの事件も、その真相は新聞等が報ずる表面的な理由では決してないことは確かですが、結果として手を出した方が「負け」であり、「損」をすることになることは間違いありません。前者の副署長は減給はともかく将来の署長の椅子を棒に振ってしまいましたし、後者の税理士は1年3ヶ月の税理士業務の停止処分を受けることになりました。ポーズで拳を振り上げるのは良いとして、その落とし所を上手に考えておかないと思わぬ代償を払う羽目になることを二つの事件は教えてくれています。