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2022.08.22|CEOコラム

身勝手な理由と思い込み ~CEOコラム[もっと光を]vol.133

 昨日、8月21日の日経朝刊に「企業の監査法人交代、最多の228件。報酬安い中小に」というタイトルの記事が載りました。21年7月~22年6月の1年間で国内の上場企業による監査法人の交代件数が228件と前年より21件増えたとのことです。そのうち140件で大手監査法人が退任した一方、新たに中小監査法人が109件を受任したと報じられています。

 

 交代の理由として監査報酬の増加をあげる企業が多く、公認会計士・監査審査会によると「監査対応と監査報酬の相当性」を理由としているケースが69件と最も多いとされています。金融庁幹部は「大手監査法人による寡占の解消が進んでいることは望ましい。ただ中小監査法人が大手監査法人の受け皿になりうる体制はまだ整備されていない」と指摘しているそうです。

 

 さて、この話題に関して当事者でもある中小監査法人を主宰する会計士の一人としてコメントしますと、監査報酬の多寡が交代理由とされているのは事実ですが、記事の中で大手監査法人のパートナーが「会計基準の変化や開示量の拡充に対応するために、監査報酬を上げざるを得ない」とコメントしているのは身勝手な理由に過ぎませんし、金融庁幹部の「中小監査法人が大手の受け皿になりうる体制はまだ整備されていない」というコメントも現実を直視していない思い込みと言うほかはありません。

 

 大手監査法人は、本来の監査業務に投下されるべきコストの何倍もの膨大な管理コストを垂れ流しながら、そのツケをすべて監査報酬に上乗せしてくるのですから、監査を受ける会社側は堪ったものではありません。コロナ禍で業績悪化に苦しむ会社に対しても、寄り添うどころか平気で報酬の倍増を通知してくるのですから、その神経は尋常とはいえません。監査にはお互いの緊張関係が必要であることは言うまでもありませんが、その一方で双方の信頼関係もなければ成り立たないという基本的な理解が欠如しているとしか思えません。金融庁幹部の中小監査法人に対するコメントも単なるイメージに過ぎません。そもそも、初年兵で構成された大手監査法人の監査チームと熟練の将校で構成された中小監査法人の監査チームとでは、どちらの戦力が優っているかなど誰の目にも明らかなのですが。

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