新型コロナウィルスの侵襲が始まって既に2年半以上が経過しましたが、ワクチンの効果等によって漸く出口が見えてきたかと思われていた矢先に再び第7波の襲来に身構えなければならなくなっています。確かに最近の人の流れを見ていると、ウィルスに対する警戒心がやや薄れていたように思います。京都でも3年ぶりに祇園祭が開催され、メインイベントの山鉾巡行にはかなりの人出があったようですが、あの人混みの中でウィルスは静かに、しかし強かに忍び寄っていたことは間違いありません。
振り返れば、人類はその歴史を重ねる中でいくつものウィルスや細菌の侵襲に遭遇し、多大な犠牲を払いつつも、何とかそれを乗り越えて生き残ってきました。例えば、14世紀にヨーロッパを席巻したペスト(黒死病)もその一例です。コロナ禍のようなウィルスではなくペスト菌という細菌がもたらす疫病ですが、当時の知識では海上交易による人の移動が感染源とされ、これを防ぐためにイタリアの港湾諸都市では検疫を強化しました。
例えば、ヴェネツィア共和国では感染した船を港から閉めだす権限をもつ臨検官を任命し、入港しようとする交易船を30日間係留して伝染病が発生しないことを確認させました。その後、それでは期間が短いというので40日間の係留となったのですが、この40をイタリア語では「Quaranta(クワランタ)」と言います。これが今日、英語で検疫を意味する「quarantine(クワランティ)」に繋がっていることを知る人は多くはありません。
このように語源をたどることは、すなわち歴史を知ることにも繋がるのです。前回のコラムで「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という話をしましたが、今回の話題もそれに続くものです。ところで、みなさん、アルファベットの語源をご存知ですか。これは、ギリシャ文字の初めの二文字である「α(アルファ)」と「β(ベータ)」に由来します。改めて、「ああ、そうなんだ」と目からうろこが落ちたのではないでしょうか。