国税当局の事務年度は7~6月であり、定期人事異動も期初の7月10日前後に行われますから、今日あたり、今年の異動情報に接することができるものと思います。実は、このタイミングに合わせて税理士に対する懲戒処分が公表されていることをご存じでしょうか。
国税庁のホームページにアクセスしますと、「税理士に関する情報」というのがあり、そこに「税理士等に対する懲戒処分等」として処分対象者の氏名・登録番号・事務所所在地・処分の内容等が公表されているのです。ご覧いただくとわかりますが、毎年6月末と1月下旬頃の年2回公表されています。先月末日付けの処分者は4名ですが、処分期間中の者が継続して公表されており、処分対象者名簿には20名前後の名前が並んでいます。
処分理由の一つに「故意による不真正税務書類の作成」があるのですが、この処分に納得のいかない税理士が国を相手に起こした訴訟の判決が、先日、東京地裁でありました。相続税の申告に際して課税対象財産が脱漏していたことに関して、税理士が当該財産の存在を未必的に認識しながら申告しなかったことは「故意による不真正税務書類の作成」にあたるとし、それを理由として行われた処分は適法だと判断したのです。報酬の有無や税理士としての署名の有無は事実の認定に影響しないとして税理士の主張は一蹴されました。
税理士の主張が一顧だにされなかった点でシビアな判断であるとは思いますが、専門家に対する責任を厳しく問うのが最近の裁判所の姿勢であることから、同業者の一人として重く受け止めなければならないと思っています。一方、処分理由には、「名義貸し行為」や「自己脱税」といったものも散見されるのですが、これらは職業倫理に悖るものでありコメントするまでもない情けない処分だと言わざるを得ません。