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2022.06.20|CEOコラム

されど鉄道オタクの知識 ~CEOコラム[もっと光を]vol.124

 1,067mm、1,372mm、1,435mm、1,520mm。これらの数字の意味が分かる方は相当の「オタク」なのですが、実は鉄道の線路の幅、つまり2本のレールの間隔である「軌間(Gauge)」を示しています。JRの在来線はすべて1,067mmで、これは日本の鉄道が新橋-横浜間で開通した当初から旧国鉄で用いられてきたものです。また、新幹線をはじめ多くの私鉄では1,435mmが採用されています。

 

 この軌間が同一であれば列車はそのまま直通できますが、例え数mmでも異なれば脱線してしまいますから直通は不可能です。利便性向上のためにJRと私鉄、あるいは私鉄同士で「相互乗り入れ」が行われていることはよく知られていますが、それが可能となるのは軌間が同じであることが前提になります。例えば、首都圏で東急線、メトロ副都心線、西武線、東武線を直通する通称「Fライナー」は各社の軌間が1,067mmであるからこそ運行可能となっていますし、地元京都では市営地下鉄烏丸線と近鉄線が相互乗り入れしているのは、両者の軌間がいずれも1,435mmだからです。

 

 一方、ヨーロッパにおける各国の軌間は、ほぼ1,435mmで統一されていますから、国境を越える国際列車のネットワークも充実しています。ユーロスターは、ロンドンからアムステルダムまで英・仏・白・蘭の4ヶ国を走破しますし、筆者がかつてベルリンからドレスデンへ移動する際に利用したのはチェコ国鉄が運行するハンブルグ発プラハ行きの国際列車でした。そのままプラハへ向かえば、そこから夜行列車に乗り継ついでポーランドのワルシャワまで行けることは分かっていたのですが、旅程の関係で果たせませんでした。

 

 このように、軌間が同一ということは利便性に優れていますが、逆の場合は大きなハンディになります。既述の通りポーランド国内は1,435mmですが、ウクライナに入るとロシアと同じ1,520mmの軌間となるため、両国間を列車で直通させることができません。かつての対ソ戦でのドイツの敗因の一つに占領地のポーランドからソ連領ウクライナに展開する前線部隊への補給路に鉄道が使えなかったことがあると言われています。ロシアのウクライナ侵攻から既に4ヶ月が経とうとしていますが、西側からの軍事支援物資の供給が必ずしも順調ではないのは、この軌間の違いも影響しているように思います。たかが鉄道オタクの知識ですが、国際情勢を読み解く上では、されど鉄道オタクの知識ともいえるのです。

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