去る5月31日、金融庁から「監査法人の処分について」がプレスリリースされました。処分されたのは仁智監査法人であり、同法人のホームページによると社員が8名の小規模監査法人のようです。処分に至る経緯は、今年の1月21日に公認会計士・監査審査会から金融庁長官に対して行政処分が勧告され、それを受けた金融庁が、公認会計士法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当と認められるとき」に該当するとして行政処分を行ったというものです。
処分の内容は、契約の新規締結を1年間停止することと業務管理体制を改善することとされており、その理由について要約すると、①監査の品質維持・向上を図る意識が法人代表者をはじめ法人の構成員である社員に欠如していること、②現行の監査の基準に対する理解や要求される品質管理及び監査手続の水準に対する理解が監査実施者に不足していること、③監査実施者は被監査企業の経営者の主張を批判的に検討していない(つまり、聞いた話を鵜呑みにしている)など職業的懐疑心が不足していること等々、監査業務全般にわたってダメ出しされており、ここまで指弾されるのは尋常ではないというのが正直な感想です。
実は、この仁智監査法人、今から7年前の平成27年6月にも処分されており、その際は業務停止までは求められず、業務管理体制を改善することのみの処分でした。改善すべき事項として、①監査法人として組織的監査の態勢を構築すること、②品質管理システムが有効に機能するよう態勢を整備すること、③監査の基準に関する理解と知識を高めることなどがありましたが、どうやらこれらの要改善事項に対して真摯に対応することなく今日に至ったようで、監督官庁としても座視できずに2度目の厳しい処分に踏み切ったようです。
金融庁が「猛省を促したにもかかわらず、未だ改善されていない」と指摘している問題点は、いずれも首肯できるものであり、同じ監査業務に従事する者の一人として他山の石としなければならないと痛感しているところです。ところが、この処分が公表されて間もない6月3日、別の監査法人にも行政処分が勧告されました。公認会計士・監査審査会は「監査法人ハイビスカスを検査した結果、同法人の運営は著しく不当なものと認められる」として金融庁長官に対して行政処分を勧告したのです。「職業的専門家としての誠実性・信用保持に対する認識が不足している」、「監査業務の品質には問題がないと思い込んでいる」、「個人情報の取扱いや独立性の確認が不十分であるなど広範かつ多数の不備が認められる」といった理由が示されていますが、それにしても懲りないヒト達が続出する現状を憂うほかはありません。