政治経済の実態や政府の施策の現状について国民に周知させることを目的として行政機関が編集発行する刊行物を白書(はくしょ)といいます。新聞等でも話題になる経済白書をはじめ、通商白書や防災白書など、その数は50を越えます。また、外務省が発行する白書は外交青書(せいしょ)と呼ばれています。
仕事柄、目を通す機会が多いのは、経済白書(正確には経済財政白書)や中小企業白書です。これらは、経営に関するアドバイスをする際に有用な情報を入手する上で目が離せないものとなっています。その一方で、防衛白書なども繙いているのですが、これは仕事柄と言うよりは、むしろ個人的な関心によるものです。
その防衛白書の令和3年版には、ロシアに関して次のような記述があります。「ウクライナ危機以降の対露制裁が解除されないまま(中略)ロシアと欧米諸国とのさらなる関係悪化につながる可能性が指摘されている」(79ページ)、「NATOの軍事インフラのロシア国境への接近、戦略的MDシステムの構築・展開などロシアに対する軍事的危険性は増大しているとの従来からの認識に加え、NATOの軍事力増強(中略)についても新たに軍事的危険性と定義し、ロシアは警戒を強めている」(80ページ)。
こうした分析からは、今回のウクライナ侵攻も想定の範囲内であったともいえます。そして「ロシアは、わが国固有の領土である北方領土においてロシア軍の駐留を継続させ、事実上の占拠のもとで、昨今、その活動をより活発化させているが、こうした動向の背景として、ウクライナ危機などを受けて領土保全に対する国民意識が高揚していることや(中略)北方領土の軍事的重要性が高まっていることなどについての指摘がある」(88ページ)として、ロシア軍の動向を注視していかなければならないと結んでいます。つまり、ウクライナでの惨劇は決して対岸の火事ではないことを理解しておく必要がありそうです。
【参考】防衛白書 https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/R03010205.pdf