拙著「新・くらしの税金百科 2021-2022」の第2章「くらしの中の税金あれこれ」に「クルマは”走る税金”って、知ってました?」というタイトルの解説があります。クルマ、とりわけマイカーに関して、「買うとき」、「持っているとき」、「走らせるとき」のそれぞれの場面で課税される税目について説明しているページです。
その中でも、「走らせるとき」の税目として、ガソリンに対しては国税である揮発油税が1リットルあたり53.8円、ディーゼル車の軽油については、地方税である軽油引取税が1リットルあたり32.1円 課税されていることを説明しています。紙幅の都合でそれ以上の詳しい解説は割愛していますが、実は揮発油税1リットルあたり53.8円のうち25.1円は暫定的に上乗せされているものです。同様に軽油引取税についても17.1円が上乗せされているのが現状です。
ところで、ニュースや新聞等で「トリガー条項」という言葉を見聞きする機会が増えていますが、これは揮発油税や軽油引取税の上乗せ分の課税を停止することで小売価格を引き下げることを話題にしているものです。ガソリンの場合、全国平均小売価格が3ヶ月連続で1リットルあたり160円を上回った場合に、トリガーつまり”引き金”が引かれて上乗せ分の課税が停止されるというわけです。このトリガー条項は2010年に租税特別措置法に明記されましたが、翌年3月に発生した東日本大震災の復興財源を確保するために「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」によって措置法の該当条文が凍結されて今日に至っています。
この凍結を解除(解凍?)をするには上記の冗長な名称の法律を改正する必要があり、機動的な対応が難しいということで、上乗せ分について補助金を給付することで代替しようというのが政府の考え方です。生活必需品とも言えるガソリン等の価格を安定化させるための努力が必要であることは言うまでもありませんが、税を徴収する一方で、それと同額の補助金を出すという発想には強い違和感を覚えます。徴税のためのコストと補助金を給付するためのコストのことが全く顧みられていないのですから…