過ちを改むるに如(し)くはなし、として賛成するべきか、それとも朝令暮改であると批判するべきか、その議論は分かれており、結論が出るまでには紆余曲折がありそうです。いったい何の話しかといいますと、上場会社に求められている四半期決算のあり方を見直すべきかどうかについての話題が熱を帯びてきているのです。
四半期決算、つまり3ヶ月毎に四半期財務諸表を作成し、公認会計士または監査法人のレビュー報告書を添えて開示するという、いわゆる四半期報告制度が導入されたのは、2008 年(平成 20 年)4月のことでした。従来の有価証券報告書と半期報告書による通年と半年の年2回の開示だけでは、企業業績の速やかな公表という観点からは不十分であるというのが導入の大きな理由でした。
ところが、経済団体からは、四半期報告制度は企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しかねず、さらに3ヶ月毎の決算開示では経理担当部署の負担も大きく、長時間労働を改善する観点からも制度の廃止が望まれるという声が上がっています。また、岸田首相も所信表明演説で「企業が長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員や取引先も恩恵を受けられる三方良しの経営を行うことが重要。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進める」と述べるなど、制度見直しの外堀が埋まりつつあるのが現状です。
導入から既に14年が経つとはいえ、当初から企業情報の適時開示という錦の御旗で押し切った感が拭えず、監査についても3ヶ月毎に本格的な手続きを実施することは困難であることを理由に本来の監査意見ではなくレビュー意見の表明という中途半端な制度が採用されました。「適正に表示していないと信じさせる事項は認められなかった」という二重否定の日本語に違和感を覚えながらレビュー報告書にサインをしてきた者としては、制度の見直しは「過ちを改むるに如くはなし」だと思っています。