一昨日から二日間にわたって実施された大学入学共通テストはもちろん、それに先立つセンター試験も知らず、ましてや共通一次試験すらも経験することなく大学に進学した世代の人間といえば、もうそれだけで年齢がバレてしまいます。つまり、共通一次試験が始まったのが1979年ですから、その年の受験生でも既に還暦を迎えているのですから、それすら知らない世代といえば…、というわけです。
筆者の受験時代を振り返ると、国立大学の入試に関しては、その日程から一期校と二期校に区分されていました。一期校が3月上旬、二期校が3月下旬に入試が行われたことから、必然的に一期校が第1志望、二期校は滑り止めという流れが定着し、それが大学の序列化に繋がっていると批判されていました。そこで、こうした弊害を是正するために1979年に共通一次試験が導入され、国公立大学については原則として一校しか受験できないこととされたのです。その後の制度改正で、センター試験を経て現在の大学入学共通テストに至ったという経緯はご承知の通りです。
それはともかく、今年の大学入学共通テストの問題にザッと目を通したところ、「政治経済」ではハンバーガーのイラストを添えて購買力平価説から円ドルレートの理解を試す問題や、「現代社会」では企業のM&Aといった表現が登場するなど、大学入試も随分進化したものだと感心させられます。また、「日本史B」では、「日本において鉄道が開通して、2022年で150年を迎える」という書き出しで、鉄道史に関する出題がありました。試してみたところ、幸い全問正解でしたが、中には「うっ…」と考えさせられる選択肢もあり、難易度は少々高めとの印象を持ちました。一方、「簿記・会計」では昔ながらの伝票制についての設問がありましたが、クラウド会計や自動仕訳が進展しつつある現在、もう少し時代を反映した出題でも良いのではないかと感じたのも事実です。
こうして、高校生は大学生へと正常進化し、将来は国家試験にチャレンジする人達もいるわけですが、社会常識として考えたとき、大学入学共通テストレベルの知識があれば十分という気がします。つまり、大学では一般教養などという高校の授業の焼き直しのような講義は最低限に留めて、できるだけ専門特化した職業教育に徹するのが良いのではないかと考えます。そうすれば、大学を出てから改めて受験予備校に通って資格試験を受けるといったことは必要なくなるわけです。現在、そうした職業に特化した専門教育を施しているのは医学部だけというが実情ですが、会計学部を修了して国家試験に合格すれば公認会計士、税法学部を修了して国家試験に通れば税理士になれるといった制度設計はできないものでしょうか。