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2021.11.08|CEOコラム

答えは55年前の議事録にあり ~CEOコラム[もっと光を]vol.92

 ここしばらく本コラムのキーワードが「1億円」になっていますので、今回もその流れに乗って続編としますが、税法においても「1億円」は重要な判定基準として用いられていることはご承知の通りです。

 

 例えば、法人税法上の中小法人は「資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人」とされ、租税特別措置法上の中小企業者も「資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人」とされています。例外もあるのですが、その詳細は措くとして原則は1億円が中小企業と大企業を区別する判定基準となっています。

 

 では、なぜ1億円が判定基準とされたのでしょうか。その答えは昭和41年3月の参議院大蔵委員会の議事録にあります。当時の大蔵省主税局長の答弁を要約しますと、「大法人と中小法人についての分け方について、中小企業基本法は資本金5千万以下あるいは従業員300人以下の二つが定義になっていますので、資本金が1億円であっても従業員が300人以下ならば中小企業の範囲に入ります。ただ、従業員基準というのは常に変動する要素であることから、税務上のトラブルが生じないように少し資本金基準は上げても、従業員基準はやめたほうがよいのではないかということにしました」ということで、1億円決定の経緯が明らかにされています。

 

 最近、上場会社でも資本金を1億円に減資して税制上のメリットを享受しようという事例が散見されることから、この1億円の基準を見直すべきではないかという声を仄聞します。しかし、55年前の1億円を現在の貨幣価値に換算すれば、おそらく5億円とか10億円になるのではないかと思いますから、1億円基準を引き上げるのならともかく、1億円以下に引き下げるという話は説得力に欠けると考えています。

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