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2021.10.25|CEOコラム

バカの壁と1億円の壁 ~CEOコラム[もっと光を]vol.90

 かつて「バカの壁」というタイトルの書物が売れました。著名な解剖学者の口述を原稿化して出版したお手軽本だったようですが、予想を超える反響を得てベストセラーになったようです。人間は、自分の脳に入ることしか理解できず、従って、学問にせよ仕事にせよ最終的に突き当たる壁は自分の脳であることを著者は「バカの壁」と表現したのです。

 

 知りたくないことや都合の悪いことについては自ら情報を遮断してしまい、耳を貸さないというのも「バカの壁」の一例だと言います。現代人はいつの間にか、自分の周りに様々な「壁」を作ってしまいました。例えば、情報は日々刻々変化しているにもかかわらず、それを受け止める人間が一向に対応できないという一種の思考停止状態も「バカの壁」なのだそうです。

 

 それはともかく、最近、「バカの壁」ならぬ「1億円の壁」という言葉を耳にすることが多くなりました。これは、累進構造であるはずの所得税の負担率が1億円を境に下がっていくことを「壁」に喩えたものと理解しています。つまり、所得税は最大45%であるにもかかわらず、株の売却益や配当に対する税率が15%に留まることから、所得に占める金融所得の割合が高い富裕層ほど実質的な税率が下がるという所得税の構造上の矛盾を指摘しているのです。現政権は発足に先立って、この「1億円の壁」問題を解消するべく金融所得課税の見直しに意欲を示していたことはご承知の通りです。

 

 確かに「分配」をキーワードにして選挙を戦うにあたって、その財源論として金融所得課税の見直しに言及することは好材料だったはずですが、経済界からの「株式市場への資金流入を鈍らせ株価に悪影響を与える」という声に怯んでトーンダウンしてしまい、結局その旗印はあっさりと下ろしてしまいました。この朝令暮改については、今度の日曜日に有権者の判断が下されますから、当日夜の選挙速報からはやはり目が離せないようです。 

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