前回のコラムで上場会社の会計監査人が大手監査法人から準大手や中小監査法人へ交代するケースが増加していることをお伝えしました。また、その理由についても、監査継続年数が長期にわたることやコロナ禍における厳しい業績に見合った監査対応を検討した結果であることなどが挙げられていることをご紹介しました。
どれも聞けば、なるほどと頷ける理由ですが、実は自らの高収益を確保するために法外ともいえる監査報酬の引き上げを要求する大手監査法人に対して会社が抵抗した結果というのが実態なのです。大手監査法人は手前勝手なモノサシで採算が合わないと判断した業務を切り捨てるべく、いわゆる「お断り価格」を提示しているのですから、契約解除となるのは織り込み済み。その結果、会社が他の監査法人への乗り換えを余儀なくされたと言っても過言ではないのです。
そこで、準大手はじめ中小監査法人が新たな監査の担い手として社会的責任を果たしているというわけです。大手監査法人のように無駄な間接部門を抱える必要がないことから監査報酬についてもリーズナブルな提案ができますし、規模が小さいが故のフットワークの良さから機動的な運営が可能となり、また監査業務に関しても遜色のない品質を確保しています。ただ残念なことに、そうでない事例が存在することも事実です。過日、金融庁から次のような退場処分を告げられた中小監査法人があったことをお知らせしておきます。
金融庁は、「本日(令和3年8月6日)、監査法人原会計事務所に対し、公認会計士法第34条の21第2項に基づき、業務停止1月の処分を行いました。処分の理由は、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められ(中略)、当該事実は公認会計士法第34条の11第1項に規定する「利害関係規定違反」及び同法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当と認められるとき」に該当する。」との処分をしたのです。詳細は下記の金融庁サイトでご確認いただくとして、中小監査法人にとっては他山の石としなければならない出来事であることは言うまでもありません。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20210806/syobun.html