国税庁のプレスリリースから目が離せません。というと少し大袈裟かもしれませんが、2020(令和2)事務年度末に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0」と「国税庁レポート2021」 が相次いで公表され、「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」もリリースされています。
今年の確定申告状況については、税務署や特設会場へ来訪することなく、また税理士に依頼することもなく、自分自身で国税庁のホームページや各種会計ソフトを利用してe-Tax で申告書を提出した人が対前年比約 1.7 倍となる 321 万人に達したとのことです。また、スマホを使って e-Tax で申告した人も対前年比約2.2倍の102 万人に増加したと報告されています。これは、冒頭で紹介した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0」において、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指す」と明記されていることが具体化しつつあることを示しています。
そこでは、税務署に行かずにできる「確定申告」、税務署に行かずにできる「申請・届出」、税務署に行かずにできる「相談」の実現が将来構想として描かれているのですが、そうなると全国に524署もある税務署の存在意義はどうなるのでしょうか。納税者が誰ひとり訪れることのない税務署を管轄区域を特定して配置する意味はなくなるでしょうから、いずれ再編や統廃合は避けられないと思いますが、何故かそのことには一言も触れられていません。敢えて言うならば、税務署の内部事務(申告書等の入力や審査、還付金の返還手続、行政指導事務等)を集約して処理する「企画業務センター」が先月から稼働を始めたということでしょうか。
いずれにしても、税務行政におけるデジタル・トランスフォーメーション推進の背景には、国税職員の定員枠が限られる中、人的資源をできるだけ税務調査の現場に投入し、実地調査率(調査対象者に対する実際の調査件数割合)の低下に歯止めをかけたいという当局のホンネが透けて見えます。そうであれば、納税者の代理人である私たち税理士も税務行政が進めるデジタル・トランスフォーメーションに伍して対応しうる体制を整えておかなければならないことは言うまでもありません。