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2021.07.26|CEOコラム

監査役に対する裁判所の視線 ~CEOコラム[もっと光を]vol.77

 「先生、監査役をお願いできませんか」とのお声がけをいただき、毎月の取締役会の開催と出席を条件にお引き受けしている会社が数社あります。名前だけの監査役では意味がありませんので、会社の運営に目を光らせることはもちろん、経営上の有益なアドバイスもできればと思い、毎月の取締役会には欠かさず出席するようにしています。

 

 取締役会では、営業をはじめとした業務報告はもちろん、月次決算の報告もあります。取締役が各自の職務を的確に果たしているかどうか、会社の進む方向に違和感はないかどうかなど、それなりに「聞き耳」を立てて職責を全うするよう微力ながら努めています。とはいえ、多くの中小同族会社では監査役に親族が就任していることも多く、会社法が予定する機能が果たされているかどうかは疑問なしとしません。監査役ではなく、「閑散役」などと揶揄されることもあるようです。

 

 そのような監査役に対して、裁判所が厳しい判決を下しました。去る7月19日、最高裁判所第二小法廷は、従業員の横領を見逃した監査役の責任を否定した二審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻したのです。 一審・千葉地裁は「漫然と監査し、監査役としての任務を怠った」としていましたが、二審は「特段の事情がない限り、帳簿に不適正な記載があることを積極的に調べる義務を負わない」と一審の判断を覆していたところ、最高裁判所は「会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合がある」としたのです。

 

 そもそも、従業員の横領を看過したからといって会社が監査役を訴えるというのは尋常ではありません。実は、この監査役が公認会計士であったことが影響しているように思います。会社にしてみれば、監査の専門家でありながら、横領を見逃したのはけしからんということなのでしょうが、本来は取締役の責任も問われなければならないはずです。それはともかく、監査役に資格要件はないとはいえ、逆に資格を持つ監査役に対して裁判所は厳しい視線を向けていることを改めて確認した次第です。

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