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2021.06.28|CEOコラム

東芝の株主総会に学ぶ ~CEOコラム[もっと光を]vol.73

 「12時間以上の時間を費やした株主総会があった」などと言うと、みなさん驚かれると思いますが、今から遡ること37年前の1984年、ソニーの株主総会は長時間の記録を更新したマラソン総会として語り継がれています。当時、株主の権利行使に名を借りて会社に不当な金品を要求する「総会屋」と称する連中がいて、今で言う反社会的行為を繰り返していました。こうした連中との決別を図ったのがソニーだったのですが、連中の意趣返しによって株主総会が荒らされて長時間に及んだと言われています。

 

 その後、総会屋を排除するための法改正が行われ、現行会社法でも総会屋への利益供与を禁じる規定が置かれています。会社が利益供与する場合はもちろん、子会社などを経由した迂回供与も厳しく禁じられ、当然のことながら会社に対して利益供与を要求するだけでも処罰の対象とされます(会社法970条)。こうした規制の強化によって、今では総会屋も絶滅危惧種になったことから、最近では長時間に及ぶ総会は珍しくなっています。全国株懇連合会の調査データからも 2時間を超える事例は僅かであり、ほとんどの会社では1時間以内となっていることがわかります。

 

 そのような状況の中、過日開催された東芝の株主総会は2時間半を超えるロングラン総会になりました。前々回のブログでも取り上げた会社法316条によって選任された調査員の報告書が取締役の責任を問うものであったことから、株主からの質問が相次いだことに加えて、会社提案の取締役候補者の一部に反対票が集中し否決されるという前代未聞の事態が生じるなど、最近では珍しい総会になったようです。

 

 とはいえ、総会が異例の展開となったのは、かつてのような総会屋による荒らしではなく、株主がその権利に基づいてしっかりとモノを言い、会社もそれに真摯に対応した結果だとすれば、むしろ緊張感のある良い総会だったのではないでしょうか。加えて、指名委員会等設置会社の運営に関して教科書からはなかなか学ぶことのできない貴重なケーススタディを提供してくれたという意味では、講学上も有意な総会であったと思います。

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