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2021.03.15|CEOコラム

抜本的な解決策は?-こっそりと延長された日切れ法案に思う…~CEOコラム[もっと光を]vol.58

 前回のコラムで思わせぶりな予告をした旧国鉄債務処理法改正案ですが、去る1月末に日切れ法案として密かに閣議決定されました。正式な名称は「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案」という冗長なもので、経営が窮境に陥っているJR北海道、JR四国及びJR貨物の3社に対する国の支援の根拠になっている法律ですが、その期限が今月末に切れることから更に10年間の延長を決めたというわけです。

 

 旧国鉄を解体して6つの地域別旅客鉄道会社と1つの貨物鉄道会社に分割したのが、いわゆる国鉄分割民営化です。1987年(昭和62年)4月1日に発足したJR7社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州と貨物)のうち、北海道や四国などは地域特性から経営基盤の脆弱性が当初から予想されていましたし、東海道新幹線というドル箱を1社だけに帰属させたのも公平性に欠けると言われていました。結果として、JR東海は一人勝ち、JR北海道とJR四国は経営難に喘ぐという現在の姿になったのです。また、貨物会社にしても、自らは線路を持たずに旅客鉄道会社の線路を賃借して走るほかはないというビジネスモデルですから、なかなか難しいわけです。

 

 いずれにしても、分割後のJR7社に勝ち組と負け組が生まれるのは最初から分かっていましたので、負け組を救済するための法律が前出の債務処理法というわけです。ただし、その内容から時限立法となっていましたが、想定した期限内に経営が改善して救済が完了する見込みなどなく、さらにコロナ禍によって経営は一層厳しくなるという状況では、こっそりと期限延長するしかないというのが実情でしょう。

 

 34年前を振り返って、旧国鉄の民営化は不可避であったとはいえ、その分割方法は正解であったとは思えません。首都圏の通勤輸送で稼ぐ会社に北海道を抱き合わせるべきでしたし、東海道新幹線で稼ぐ会社に四国を抱き合わせるという知恵も必要だったのです。ましてや、青函トンネルや本四連絡橋といった巨額の維持費を必要とするインフラをJR北海道やJR四国に帰属させた理由も不可解です。日本地図を眺めながらハサミを入れて「はい、一丁あがり」のような安易な分割をしたことが今になお禍根を残しています。こっそりと日切れ法案を延長するよりも、もっと考えるべきことはあるはずです。

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