国土交通省の資料によると、所有者が明らかでない土地の割合は2割に達し、面積では約410万haに相当するとのことです。九州の面積が368万haですから、それを超える面積の土地の所有者が分からないというわけです。所有者が特定できなければ円滑な土地取引もできず、公共事業や災害復旧工事を進める際の大きな障害にもなっています。
その原因は明らかで、相続登記が忌避されていることと所有者の住所変更が登記に反映されていないことによります。相続登記に関しては、相続人が登記費用や後々の固定資産税の負担を嫌って登記せずに放置している実態があります。換価が容易な都市部の不動産であればともかく、売却もままならない地方の物件では積極的に登記手続きをする動機が乏しいことも理解できます。法務省によると、最後の登記から50年以上経過している割合は、大都市では6.6%、大都市以外では26.6%とのことですから、「なるほど」と首肯できるところです。
しかし、こうした状況を放置しておくことはできないということで、過日、民法及び不動産登記法の改正法案が閣議決定されました。改正案によると、これまで任意だった相続と住所変更の登記申請が義務化され、義務を怠った場合には行政罰である過料が発生することになります。一方で、相続した土地が不要な場合に国有地化を認める「相続土地国庫帰属法」が創設されることになりました。従来は、相続財産管理人を選任しなければ国に所有権を移転することができなかったのですが、新たな法律では一定の条件を満たせば土地を国庫に返納できる仕組みが導入されます。
地方では、不動産が「負動産」になっていると言われて久しいのですが、均衡ある国土の発展という掛け声とは裏腹に都市部と地方の格差は拡がるばかりです。目先の法律改正もさることながら、虎の子の財産であるはずの不動産が負動産になる状況こそが解決されるべきだと思います。そんなことを思いつつ、これも過日閣議決定された旧国鉄債務処理法の改正案のことも気になりました。沿線人口の減少から経営が窮境に陥ったJR北海道とJR四国に対する支援策を延長する内容ですが、こちらも法律改正もさりながら根本的な解決策こそが検討されるべきです。おっと、この話は、また次回に…