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2021.02.08|CEOコラム

拡充される役員報酬の開示制度~CEOコラム[もっと光を]vol.53

 前回お話しした粉飾決算ですが、法律的に一言で表すと「計算書類もしくは財務諸表の虚偽記載」ということになります。この虚偽記載という点では、日産の元会長で逮捕された後に国外逃亡したカルロス・ゴーン被告が起訴されたのも金融商品取引法違反(虚偽記載)で、自らの役員報酬を約91億円過少に記載していたという嫌疑です。

 

 役員報酬に関しては、2010年3月期決算から1億円以上の役員について名前と金額が開示されることになり、当時ゴーン被告も開示対象となる中で巨額の報酬を秘匿したいという動機から虚偽記載が行われたとされています。動機は裁判を通じて明らかにされると思いますが、報道によると、「真実の報酬が明らかになると辞任を求める圧力が高まる」、「ルノーの取締役会に知られたくない」といった証言が紹介されています。

 

 それはともかく、この事件が役員報酬の開示制度に一石を投じたことは否めません。報酬額の根拠や決定過程について明らかにする必要性が議論されている中で事件が起こったからです。新たなルールでは固定報酬のほか、業績に合わせて増減する報酬の割合、業績連動部分の決め方や根拠となる経営指標などを明記することが求められました。報酬の決め方を開示すれば、投資家による監視の目が強まり、ガバナンス(企業統治)の強化につながるというわけです。

 

 そして来月1日からは、改正会社法が施行されます。株主総会の運営や取締役の規律などを見直して、企業統治を強めるのが目的です。社外取締役の設置が義務付けられるほか、株主総会で個別の取締役の報酬を決めていない場合には、取締役会による決定方針の決議と概要の開示が求められます。取締役会から委任された形で経営トップが自らの報酬を決める、いわゆる「お手盛り」を防ごうというわけです。何も巨額の報酬を得ることが悪いわけではありません。説明ができるのであれば、秘匿することなどなく堂々と得れば良いだけの話なのですが…

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