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2021.01.25|CEOコラム

制度は改善される、かな?~CEOコラム[もっと光を]vol.51

 コロナウイルス禍の収束が見通せない中、「いつ何が起こるか分からない」、「何かが起こった時の対応に不安が残る」といった声を耳にすることが多くなりました。こうした不安感の高まりが、これまで先送りにしてきた相続の問題についても真剣に考えるきっかけになっていることも事実です。

 

 そのような状況下、昨年7月から自筆証書遺言を法務局が保管する制度が始まっています。遺言書は相続トラブルを防ぐのに役立ちますが、自筆証書遺言は形式の不備から無効とされることが少なくなく、改ざんや紛失のリスクもあります。また、遺言者が亡くなった時には家庭裁判所で検認を受けなければならないという大きなハンディキャップがあります。そこで、法務局による遺言書保管制度を利用すれば、形式のチェックを受けることができ、改ざん等のリスクもなく、検認も不要ということで、制度の導入は歓迎されました。

 

 ところが、実際に利用してみますと、なかなか思い通りには運ばず、歓迎された制度ではあるものの、現状では使い勝手が良くないことが分かりました。公正証書遺言にするまでもない少額の財産のケースで利用を試みましたが、お年寄りに法務局指定の書式(A4サイズ限定で上下左右の余白の指定まであります!)に従って自筆で長文を書いてもらうことはなかなか大変ですし、また利用にあたっては顔写真付きの身分証を求められますが、お年寄りに運転免許証やパスポートを用意してもらうことは至難の業です。さらに、お年寄りご本人に法務局まで出向いていただく必要がありますが、これも結構骨が折れます。

 

 というわけで結論を言いますと、少々コストがかかっても公正証書遺言にするのが得策ということです。つまり、遺言書保管制度の使い勝手は甚だよろしくないという、かつての国税電子申告・納税システム(e-tax)を彷彿とさせる代物で、現状ではお勧めできません。もっとも、利用者の声を聞いて制度は改善されると期待はしています。ちなみに、国税庁によると、e-taxの利用率は制度導入から15年を経て、所得税申告で約6割、法人税申告ではほぼ9割に達しているとのことです。

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