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2020.12.21|CEOコラム

税制改正大綱から垣間見える違和感~CEOコラム[もっと光を]vol.46

 先日発表された令和3年度税制改正大綱の冒頭に「基本的考え方」として「管内閣は、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会実現のため、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする”2050年カーボンニュートラル”の実現を目指すことにしており、税制面においても必要な支援をしていくこととする」との記載があります。

 

 30年後の目標を明確にすることは重要ですが、大綱に示された税制面における支援の内容は、温室効果ガス削減に資する製品製造設備の取得価額の10%を税額控除するという既存の制度の延長線に留まるものです。また、電気自動車等の普及促進についても、現行の車体課税制度の見直しと適用期限の延長に留まっていますから、30年後の目標達成に向けた税制には程遠い、文字通り羊頭狗肉の内容になっているのが実情です。

 

 それよりも2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするために解決すべき課題は山積しています。例えば、自家用車だけでも約6千万台もある内燃自動車を30年間ですべて電気自動車に代えることに伴う新たな電力需要にどのように応えるのでしょうか。あるいは、ガソリンスタンドに代わる充電ステーションはどこにどれだけ設置するのでしょうか。職場や家庭での充電機器はどうなるのでしょうか。これらの課題を解決する道筋が何も見えてこないのです。

 

 この点、日本自動車工業会会長は先日のオンライン会見で、「乗用車400万台を電動化するとピーク時の発電能力を1割以上増強しなければならず、そのためには10基程度の原子力発電所もしくは20基程度の火力発電所が新たに必要になる」との試算を示しました。温室効果ガス排出ゼロを目指しながら新たに火力発電所を建設するなどブラックジョークでしかありません。さらに、「日本には軽自動車しか走れない道が85%もあり、ライフラインになっている軽の存在を無視できない」とも述べています。先日、筆者が試乗した電気自動車はバッテリーの搭載によって車重が2トンを超える巨躯にもかかわらず航続距離は300㎞台に留まり、1時間の急速充電でも100㎞分のマージンしか確保できないという代物でした。筆者は日帰り出張で往復600キロを走ることがありますが、これでは全く使い物になりません。つまり、技術もインフラもすべてが道半ばの状態で語られる”2050年カーボンニュートラル”には強い違和感を抱かざるをえません。

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