資格を持っていることと仕事ができることは、イコールではありません。資格にあぐらをかいて日々の研鑽を怠っている人達も少なくありません。そのような実例を数多く目の当たりにしてきましたが、仕事ぶりに疑問符がつく資格者や職業専門家が一定数存在するのが、残念ながら業界の実態なのです。
過日、そのような実態が明るみに出る判決がありました。一審判決は昨年11月に原告(納税者)の訴えを棄却し、二審判決も今年8月に控訴を棄却し、課税庁が行った38億円の消費税の追徴課税を適法としたのですが、これらの判決文から垣間見えるアホ税理士の対応には呆れるばかりです。いくら資格があっても知識に欠け実務を知らなければ、納税者に38億円もの損害を与えてしまうことを証明してくれたのです。気の毒なことに38億円を追徴された納税者(法人)は資金繰りに窮したのか、10月以降多くの営業店で休止や閉鎖に追い込まれているようです。
さて、このアホ税理士は関与している納税者に対する税務調査にあたって事前通知がなかったことに反発して調査を徹底的に忌避し、挙げ句には納税者の納税地を他局の管内に異動するという子供じみた対応に終始するなどして、ついに国税の虎の尾を踏んでしまったのです。その結果、消費税法30条7項が発動され、38億円にのぼる仕入税額控除を否認されたというわけです。帳簿の提示がないということは同条項にいう帳簿の保存がないことと同視されるというのが追徴課税の根拠ですが、そんなことは税理士なら誰でも知っている1丁目1番地の知識です。
それにもかかわらず、このアホ税理士は控訴審で「仕入税額控除否認の仕組みに関する知識がないままに帳簿の不提示を続けたのであって、国税職員は仕入税額控除否認の仕組みについて説明教示すべきであった」と主張しました。つまり、自分の知らないことを教えてくれていたら調査を拒否しなかったというわけですから、職業専門家としての意地もプライドもない主張に開いた口が塞がりません。このアホ税理士、実は公認会計士だったというのがオチなのですが、公認会計士だからといって税務に明るい保証はないことを世間に晒してくれたのですから、同じ立場にある筆者としては怒りが収まりません。