コロナ禍の第三波が到来し、観光業や運輸業等に再び悪影響が出ることが懸念されています。今月になって3月決算会社の第2四半期報告書が相次いで発表されましたが、観光関連企業の毀損した数字には驚きを隠せません。例えば、帝国ホテルでは売上高が前年同期比3分の1以下に減少し、45億円を超える営業損失を計上していますし、筆者のお膝元の京都ホテルでも同様の状況を窺うことができます。
また、運輸業でも影響は甚大で、ANAホールディングスでは売上高が前年同期比27%まで激減し、2,600億円を超える営業損失となっています。さらに、営業活動によるキャッシュフローが1,900億円を超えるマイナスとなる一方で、財務活動によるキャッシュフローが4,600億円のプラスとなっていますから、損益と資金繰りの両面から同社が直面する窮状を垣間見ることができます。
このような窮境から企業を救済するべく政府が主導する「Go To Travel」政策が福音になるはずでしたが、それがコロナ禍の拡散を助長して第三波の到来につながったことから、政策の見直しが不可避となっています。その結果、窮境にある企業は、究極の自助努力を図るほかはなく、持てる力を振り絞って難局に臨むしかないというのが実情のようです。
そのような中、某メーカーに発注していた車両が欧州の工場をラインオフして、自動車専用船で日本に向けて航送中との知らせを受けました。その専用船の航路をネットで調べると、出荷港から地中海に入らずに大西洋を一路南下しています。つまり、スエズ運河を経由せずに喜望峰周りで日本に向かっているのです。コロナ禍で船荷が減少する中、海運会社が航行距離と航送時間で不利になっても、高額なスエズ運河の通航料を節約していることを知り、思わぬところにもコロナ禍の影響が及んでいることを再認識した次第です。