ドローンの進化とその活躍シーンの多様化には目を見張るものがあります。土木の分野で上空からの測量に応用されていることなども一例ですが、これまで不可能であった夜間の行方不明者捜索にドローンを活用する実証実験が成功した事例などは注目に値します。上空から遭難者の体温を感知して位置を特定し、その位置情報を受けて捜索に向かう隊員の体温も感知しながら目的地へ誘導するというのですから、お見事と言うほかはありません。
このドローン、4つ以上のローターを搭載した回転翼機(マルチコプター)のことですが、その名前は英語の「ブーンと唸る」に由来しています。回転制御と姿勢制御にはセンサが多用され、そのセンサで得た情報を解析するにあたっては数学が応用されています。「ジャイロセンサで計測された刻々と変化する角速度を時刻で積分して自身の傾きを認識し、翼の回転数を制御して姿勢を安定させている」と聞くと、「う~ん、やっぱり積分か…」となるわけです。
かつて、ある出版社が「数学、謝る」という意見広告を掲出しました。高校生の頃、この出版社の数学参考書に必死で取り組んだものの、その難解さに辟易として数学嫌いになった一人として、「数学嫌いにしてゴメン」という趣旨の広告に溜飲を下げた記憶があります。しかし、今となっては、逆に数学に謝らなければならないのでしょうか。何しろ、身の周りの便利な道具は、すべて数学の応用で実用化されているのですから、それを知る努力を怠ってゴメンね、と。
前出のドローンはもちろん、クルマのナビや自宅のお掃除ロボットも数学の応用による実用化の賜物です。GPS電波が届かないトンネルの中でもナビが正確に動いているのは何故か。お掃除ロボットが部屋の見取り図を自ら作成しながら掃き残しがないように動くのは何故か。こうした実用化の背景にあるのが数学なのだから勉強する必要があると教えられたら、そして単なる数式の列挙の後に「解を求めよ」なんて無味乾燥な質問攻めに遭わなければ、もう少し数学が好きになったかもしれません。やはり、数学には(その教え方を)謝ってもらうべきなのかもしれません。