麻布、川崎北、南、宇治、枚方、葛飾、芦屋、向島、茂原、東京上野。これらは、ここ一ヶ月の間に職員がコロナに感染した税務署名です。該当署では、窓口の消毒をはじめ、業務の一部停止など所要の対応を余儀なくされたようです。国税職員5万6千人を分母にすれば僅少な数字なのかもしれませんが、それにしても、やや多いという印象は拭えません。
このような状況にもかかわらず、コロナで中断していた税務調査を今月から再開したい旨が国税サイドからアナウンスされました。手順としては、納税者への通知に先だって私たち関与税理士に連絡が入り、調査実施の環境等について納税者の理解が得られれば着手したいとのことです。弊社にも既に数件の連絡があったようですが、納税者の理解を得ることは難しく、いずれも時期尚早ということで見送りになりました。いつまでも調査を中断したままにはできないという国税サイドの事情もわかりますが、身内からの感染者発生が止まらない状況では無理筋という気がします。
それはともかく、冒頭に掲げた税務署名で不思議に思われたことがありませんか。南税務署って一体どこの南なのか、東京上野って何故わざわざ東京がついているのか、など…。実は、税務署の名称にも色々な歴史や経緯があるのです。例えば東京上野税務署は、かつて下谷税務署といいました。管轄するJR上野駅に因んで上野税務署への変更が検討されたのですが、既に三重県上野市(現在は伊賀市)に上野税務署が存在していたため、東京の二文字を冠して区別する必要があったというわけです。また、南税務署のように東西南北だけの税務署名は大阪局管内に既存のため、札幌局管内では札幌東、東京局管内では練馬西、広島局管内では広島南といった具合に地名を冠して区別しています。一方、福島税務署は福島市と大阪市にあるので後者を大阪福島とし、中村税務署も名古屋と高知にあるので、前者を名古屋中村としています。
このように名称一つをとっても「被り」が生ずるほど税務署は全国に多数あります。その数、524署。それが明治29年の税務署創設当時からほぼ変わっていないと聞けば、みなさん驚かれるのではないでしょうか。もちろん、時代背景とともに役割も変化し、署の数も増減することはあったものの、結果としては124年間ほぼ同じなのです。しかし、コロナで社会の景色が激変し、様々な分野でオンライン化に弾みがつく中、税務行政が例外であるはずがありません。その意味で、もはや524署がそのまま維持される時代は終わったというべきでしょう。そういえば、自分自身のことで所轄署に足を運ぶことなど、もう10年以上していないなぁ(笑)