夏場こそビールの消費も増えましたが、秋の気配が深まるにつれ、わが家の食卓ではワインが主役に戻りつつあります。その理由は、ワインが体に良いという説に頷く一方で、実は酒税の安さが魅力だからです。350㎖換算で、ビールの77円に対してワインは28円ですから、その差は歴然としています。アルコール度数に換算すると、その差はさらに開くというわけです。酒税負担の軽重で酒類の好みを考えるなど、いかにも職業病の見本のようですが、酒税の偏った課税には疑問なしとしません。加えて、酒税に消費税が課税されるという二重課税の問題も日頃から腹立たしく思っています。
ところで、酒の歴史は極めて古く、その起源は神話にまで遡ることができます。人類史上、酒が好まれ、様々な行事で酒が用いられていたことは各種の文献からも明らかです。したがって、その酒に対する課税の歴史も古いことは容易に想像がつきます。たかだか30余年の歴史しかない消費税はもとより、所得税や法人税などよりもずっと歴史は古いわけですが、課税の根拠は「生活必需品ではなく嗜好品であり、課税を通じてアルコールによる社会的費用を抑制する効果があるから」(税務大学校講本「間接税」)とされています。しかし、今やそんな理屈に誰も納得しないと思いますから、要は「取りやすいところから取る」ということであり、それは悠久の昔から何も変わっていないということなのです。
さて、その酒税が来月から大きく変わります。前述の通り、350㎖換算でビールに77円も課税されているのに対して、ビールメーカーの努力によって開発された発泡酒が47円、さらなる英知による産物である「第3のビール」が28円だったのですが、これらの格差を是正するという名目で、ビールを7円引き下げて70円にする一方、第3のビールが10円引き上げられて38円になります。ビールメーカーの企業努力あるいは開発投資を踏みにじる愚策に腹立たしさすら覚えます。
その怒りはまだ続きます。3年後にはビールが再び7円引き下げられて63円になる一方、発泡酒と第3のビールは統合されて47円になります。さらに、その3年後つまり6年後には三者間の区別が撤廃されて一律54円に統一されることになっています。それに合わせてワインも来月から3.5円増税されて31.5円に、3年後にはさらに3.5円増税されて35円になります。また、日本酒は現在42円ですが、段階的に引き下げられて、ワインと同額の35円になります。こうなると、もはやビールであろうがワインであろうが日本酒であろうが、一律の課税にするのが本来あるべき姿ではないでしょうか。もっとも、そうなるとワイン派にとっての選考理由がひとつ消えてしまうのですが…(笑)