過日、日経新聞1面に「国内会計不正 5年で3倍、粉飾や資産流用 統治実効性に課題」という見出し記事が掲載されていましたが、ご覧になったでしょうか。今年、2020年3月期は前年から比べて不正会計が7割も増加し、5年前と比べると3倍もの会計不正事件が発覚したという内容です。
これは日本公認会計士協会が7月15日に公表した経営研究調査会研究資料第7号「上場会社等における会計不正の動向(2020 年版)」を紹介した記事に過ぎないのですが、「国内会計不正が5年で3倍」などとインパクトの強い見出しで記事にされると、一体何ごとかと思ってしまいます。読んでもらうためには必要な印象操作なのかもしれませんが、少々過激なような気がします(笑)
それはともかく、ネタ元である経営研究調査会研究資料第7号では会計不正(Accounting fraud)の類型を「粉飾決算」と「資産の流用」に分類し、その類型毎に手口や実行犯の実態、さらには業種別の傾向などについて分析しています。詳細な分析結果についてはネタ元を参照していただくとして、注目しておきたいのが「会計不正の発覚経路」です。
会計不正が発覚するきっかけの多くは内部通報であり、内部監査や会計士監査が発覚の端緒となるケースは実は少数に留まるという分析結果が示されています。確かに、監査は不正の発見を目的とするものではありませんし、特に会計士監査では時間的・コスト的な制約がありますから、不正発見はなかなか難しいのが実情です。それ以上に、不正を企む犯人の方が善良な会計士よりも数枚上手ですから、その意味でも会計士監査は残念ながら会計不正を見抜くのは得意ではありません。もっとも、会計士もバカではないので、人工知能(AI)を活用して取引データを分析し異常値を検知するなど、不正を発見する工夫はあれこれと重ねてはいるのですが…(笑)