明日6月30日にトヨタ自動車が販売する小型高性能スポーツカーのネット予約が締め切られます。豊田章男社長の肝煎りで作られたこのクルマ。彼の言葉によると、「これまでのトヨタは市販車をいかにモータースポーツのプロの世界に持って行くかという流れでしたが、それとは逆に勝つために作ったクルマを市販車として使っていただくというように流れを大きく変えた最初のクルマなのです」とのことです。
この言葉に共鳴あるいは感動したユーザーからの予約注文は既に5,000台に達しているとのことですが、なにしろ専用工場でラインに乗せずに一台づつ手作りに近い方法で生産する特別なクルマですから、納期に1年近くを要するとのことです。これも彼の言葉を借りると、「今までのトヨタのクルマはいかにお客様をお待たせしないかということで作ってきました。しかし、今度は少しお待ちいただくことになりますが、お手元に届いたときには生産工程の一人一人、部品メーカーを含め、このクルマに関わったすべての人の愛情がこもっていますので、是非可愛がっていただきたいと思います」と熱く語られています。
さて、一方でクルマの国内販売状況は芳しくありません。一般社団法人日本自動車販売協会連合会によると、普通乗用車(いわゆる、3ナンバーのクルマ)の販売台数は20年5月のデータで、対前年同月比50.0%、対前年累計比75.6%と報じられています。もちろん、その原因の一つが新型コロナウイルス感染症の拡大による需要の急激な落ち込みにあることは間違いありませんが、果たしてそれだけなのでしょうか。
冒頭で紹介したような社長の熱い思いの込められたクルマの受注は好調ですし、同じくトヨタ自動車が独BMW社と共同開発し、オーストリアのマグナ・シュタイアー社で生産する高級スポーツカーの限定車には販売予定台数の100倍もの注文が殺到するというのですから、売れない理由はコロナウイルス禍ではなく、ユーザーの心を鷲づかみにするような魅力あるクルマがないということなのだと思わざるを得ません。私たち経営に携わる者として、窮境原因を安易に外的要因に求めることなく、常に足元を見つめ直すことの重要性を再認識したいものです。
【追記】筆者は100倍の抽選には外れましたが(泣)、明日締め切りのネット予約は早々に申し込みました(^_^)