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2020.04.06|CEOコラム

天に唾する減損会計~CEOコラム[もっと光を]vol.10

 減損会計とは、事業に供している固定資産から得られる将来収益が低下すると予想される場合に、その固定資産の簿価を減額して損失を顕在化させる会計ルールをいいます。固定資産については取得原価主義会計のもとで減価償却によって費用化が図られていますが、それとは別に将来収益の低下を見積もることによって簿価を減額修正しようというものです。

 これは従来の取得原価主義会計に修正を迫る時価主義会計の考え方の一つなのですが、収益の低下だけを捉えて逆に収益が増加した場合の手当は無視するという極めて保守的な会計ルールです。そもそも将来収益の低下をどのように見積もるのかは甚だ困難な問題であり、いわば神のみぞ知る将来の世界を、あたかも見通したかのように判断して評価するという不遜この上ない会計ルールなのです。

 そのような不遜な会計ルールがここへきて大きく揺らいでいます。その原因は今回の新型コロナウイルス禍にあるのですが、先日の日経新聞が報じるところによると、コロナウイルス禍に伴う業績悪化を和らげるために、企業の減損処理については柔軟に判断できるようルールの適用を弾力化することが検討されているそうです。

 つまり、自動車を生産しない工場や宿泊客のいないホテルは、当然のことながら将来収益は限りなくゼロですから、本来ならば巨額の減損処理が必要となるはずのところ、それでは業績が著しく悪化してしまうので、ルールを柔軟に適用することによって損失の計上を見送ることを容認するというわけです。不遜にも将来収益を見積もって固定資産を時価評価すると声高に叫びながら、コロナウイルス禍がもたらす急激な業績悪化に怯んでルールを緩和するとは何ともご都合主義と言うほかはありません。減損会計が天に唾するものであることを再認識させる話題として記憶にとどめておきたいところです。
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