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スタッフコラム

東京事務所
2024.07.22|経営

「でんさい」使っていますか?

 商取引では、物やサービスの対価としてお金の動きがあります。そのお金の動きには、現金(通貨)もあれば、最近普及が著しい電子マネーもある一方で、手形・小切手も支払い手段としてまだまだ健在です。
 国は2026年度末(今から2年8か月後)までに紙の手形・小切手の全面的な電子化方針を示しています。これに合わせて金融界も足並みを揃えて紙の手形・小切手から電子決済サービスへの移行を強力に推進しており、本コラムでは、手形に代わる電子決済サービスである「でんさい」についてあらためて整理をしてみます。

1.「でんさい」とは

○仕組み
 手形取引は、支払手形という所定の様式、所定の記載事項を満たした紙片自体が支払い手段として流通し、期日に金融機関で支払われることによって支払が完結するものでした。 
 これに対して「でんさい」は、支払手形に記載すべき情報を「でんさいネット」に記録することによって認識される電子記録債権をやり取りする仕組みです。
 この点、手形は支払期日が振出日よりも先の日付となるため、現金と同等の小切手による支払手段が振込という支払手段にほぼ置き換わったのと比べて電子化が遅れていたと言えるでしょう。

○事業主体
 一般社団法人全国銀行協会の100%子会社として設立された㈱全銀電子債権ネットワーク(通称)「でんさいネット」)が事業主体となっていて、電子記録債権法にもとづく電子債権記録機関のうちの一つです。また、「でんさいネット」には494の参加金融機関が加盟しています(2023年11月現在)。

2.「でんさい」を使うメリット(手形と比べ)

○安全性(紛失・盗難)
 手形のように盗難の心配がありません。なお、手形についても、紛失、盗難の場合には所定の手続きをすることで所持者としての権利を行使することが可能ですがその手続きは煩雑です。

○事務ミス(取立てもれ)が起きにくい
 支払手形は支払期日に支払銀行へ呈示することで資金化することができますが、たとえば、金庫にしまったまま支払期日を過ぎてしまうと支払銀行では資金化できないため、手形の差し替えが必要になるなど資金化が遅れてしまうことが起こり得ます。

○分割支払
 支払い手段としての支払手形は、手形じたいが流通するため、裏書譲渡に際して手形に記載された金額を分割することができません。しかし「でんさい」ならば任意に金額を分割することができるので裏書譲渡による支払の自由度が高まります。

○手数料(手形用紙代、印紙、郵送代、取立手数料)
 支払手形の発行には手形用紙代、収入印紙代、手形の郵送代がかかります。支払手形を受け取った側では、領収書の郵送料、手形取立手数料がかかります。これに対して「でんさい」は、取引金融機関に事務手数料を支払う必要はあるもののトータルのコストが低いとされています。

3.財務諸表(決算書)の表示

○貸借対照表への表示 
 これまでの受取手形にあたるものが「電子記録債権」、支払手形にあたるものが「電子記録債務」として貸借対照表の流動資産の部、流動負債の部にそれぞれ表示されます。
 なお、重要性が乏しい場合には、手形債権に含めて表示することができるとされています。

○注記(割引・譲渡)
 受取手形の割引高または裏書譲渡高は財務諸表に注記を行うとされていますが、それと同様に、電子記録債権を譲渡する際に譲渡記録により保証記録も行っている場合には「電子記録債権割引高」等のように偶発債務の内容を明示した注記を要します。

○損益計算書(譲渡)
 受取手形を金融機関等で割り引く際の割引料は手形売却損ですが、これに該当するのが「電子記録債権売却損」です。

4.まとめ

 これまで、受取手形、支払手形を主な決済手段としてきた会社にとっても、取引先の要請などにより動きが活発化し、2026年度末に向けて一気に「でんさい」化が進むことが予想されます。
 私どものお客様の声をお聞きしていても、「でんさい」になって事務量が減ったという実感をお持ちの方が多いので、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

(文責:東京事務所 今井)

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