1.こんな場合は申告期限の延長を検討してみましょう。
申告期限までに決算が確定しない場合
法人税の申告は株主総会で承認を受けた決算書に基づいて行う必要がありますが、会計監査に時間を要するなど、本来の申告期限までに決算が確定しない場合、特例により申告期限を1ヶ月延長することができます。
災害などのやむを得ない理由が発生した場合
その災害等が止んだ日から2か月以内に限り申告期限の延長が認められます。災害などによる期限の延長には、地域指定による期限延長と個別指定による期限延長があります。
地域指定による期限延長
大規模な災害が発生して被害が広地域に及んだ場合に、国税庁長官が地域と期限を定めて実施します。この場合は、税務署に申請する必要はありません。
個別指定による期限延長
個別に税務署に申請することにより申告期限が延長されるものです。地域指定が行われた地域以外で災害が発生した場合や、地域指定が行われた地域で被災した事業所があるものの、本店が指定地域以外にあるために地域指定による期限延長が受けられない場合などに適用されます。
2.延長するための確認事項と手続き
申請に必要な要件は2つ
確定申告の期限を延長するためには、次の2つの条件を満たさなければなりません。
- 定款で株主総会が決算日から3ヶ月以内と定められていること
- 決算日の翌日から45日以内に延長手続きを行っていること
まずは定款の確認を
定款に「当社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3カ月以内に招集する」などの文章があれば、申告期限の延長を申請できます。
定款で「2カ月以内」となっている場合でも定款を変更すれば、申告期限の申請が可能です。
所轄税務署への申請を
最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに、所轄税務署に「申告期限の延長の特例の申請」を行う必要があります。延長申請の理由の欄には、「定款により、事業年度終了日の3ヶ月以内に株主総会を招集するため、申告書の期限までに決算が確定しないため」
などと書いておけばよいでしょう。
<国税庁HP>
[手続名]申告期限の延長の特例の申請
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_12.htm
3.うっかりミスがないように!見落としがちな注意事項
法人事業税・住民税の申請は別途必要
忘れやすいのが「住民税」「事業税」についての申請です。「法人税」の延長申請については記載しましたが、住民税・事業税については、都道府県、市町村に対し別の申請手続きが必要になりますので注意が必要です。
都道府県、市町村によって手続きは異なることがあります。詳しくはホームページや役所にお問い合わせください。
申告が延長できても、納税は原則どおり
延長できるのは申告手続だけで、納期限は延長されません。よって、納税は原則どおり、決算日後2ヶ月以内に済ませる必要があります。
納期限までに納税できない場合は、延長した期間の日数に応じて利子税が課されます。
実務的には、本来の申告期限に概算で「見込納付」し、実際の申告時に差額を精算する、という方法があります。多めの税額を見込納付しておけば、申告後に差額は返還(還付)されます。申告期限までに税金を納付しているので、利子税もかかりません。
申告期限を延長していても納付は原則どおりですので、くれぐれも納付もれにならないように注意しましょう。
消費税に期限延長はない
そして最後にもう一つ。申告期限の延長は、法人税、住民税、事業税が対象です。
消費税に申告期限の延長の特例はありません。
消費税は原則どおり、決算日後2ヶ月以内の申告・納付が必要です。
法人税について延長申請が認められても消費税は延長できませんのでくれぐれもご注意ください。
4.まとめ
決算スケジュールをたて余裕をもって準備しましょう。
確定申告の期限の延長は可能ですが、決算は毎年やってくることです。事前に決算スケジュールをたて、しっかり準備して決算をむかえましょう。
なお、平成29年度税制改正で、一定の要件を満たした場合には最大で4ヶ月まで延長が可能になるという見直しがなされていますのでそちらは別号でご説明予定とします。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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