1.会計基準の概要
株式会社は会社法により、決算書の作成が義務付けられています。会計基準とはその決算書を作成するときに基準となる会計処理ですが、中小企業の会計基準は「中小企業の会計に関する指針(以下、中小指針)」「中小企業の会計に関する基本要領(以下、中小会計要領)」という2つの会計基準があります。
そもそも会計処理は取引の内容に応じて処理されるべきで、実態が同じ取引であれば同じ会計処理を採用すべきです。しかしながら、中小企業は大企業より株主などの利害関係者の対外的な関わりが少なく、中小企業に大企業と同じ厳格な会計基準を採用させるには負担が大きいため、中小企業にあわせた会計基準がつくられました。
それが中小指針と中小会計要領であり、この会計基準を採用することにより、決算書の信頼性が増して、自社の経営状況がより正確に把握できるようになります。
実際に採用する場合には、中小指針と中小会計要領についてチェックリストが設けられていますので、そのチェックリストを利用します。またチェックリストの信頼性を確保するめに税理士等の署名が必要となります。
中小指針について
中小指針は、中小企業が決算書を作成する上で採用することが望ましい会計処理や注記等を規定しています。たとえば、金銭債権の表示はきちんと区分されているかや固定資産は適切に減価償却がされているかなどです。それぞれの項目に確認事項があり、一定の水準を保つように設計されているわけです。
対象企業は、会計参与設置会社など中小企業の中でもある程度の規模の中小企業を対象にしています。
また、この中小指針は日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体が作成しており、定期的に見直しがされています。
中小会計要領について
中小会計要領は、中小企業の実態に合わせてつくられた新しい会計基準となっており、中小指針よりも簡便な会計処理を採用しております。
中小会計要領の対象企業は、中小指針を採用している企業以外の中小企業となります。
中小会計要領は中小企業関係者等が主体となり、金融庁・中小企業庁が事務局となってつくられたもので、下記のような中小企業の実態を考慮してつくられていますので、中小企業のなかでもより小規模な中小企業を想定しています。
- 経理担当がおらず(あるいは少ない)、決算作業の負担が大きい。
- 決算書の提出先が金融機関、税務署、取引先、同族の株主などに限られている。
- 会計処理が法人税法で定められた基準で行われている。
2. 中小企業の会計基準のメリット
中小企業の会計基準を採用した場合は、採用しなかった場合にくらべて決算書の精度と信頼性が増します。そこにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
実際に会計基準を採用してみると、以下のようなメリットがあげられます。
取引先等への信用力を高めることができる
取引先、金融機関などへこの会計基準により作成した決算書を使って決算報告や自社の情報を提供すると信用力が高まります。
その結果、取引先との契約の拡大や金融機関からの評価が上がり資金調達を上手く進めることができます。
融資の際に有利になることがある
中小指針・中小会計要領を適用すれば、決算書の作成時に会計基準のチェックリストを作成しますが、決算書などの資料と一緒にこのチェックリストを付けて提出すると、下記の融資メリットを受けられる場合があります(金融機関あるいは期間によって変わります)。
- 融資利率が低くなる
- 保証協会への保証料率の割引がある
- 固有の融資の制度がある
経営分析によって自社の経営状況が把握できる
正しく経営判断をするためには現在の経営状況を把握する必要がありますが、それには正確な経営状況を知らなければなりません。会計基準を採用することで、自社の経営状況が正しく反映された決算書が作成できますので、現在から未来への経営判断につなげることができます。
また、他の会社と比較をする際には、同じ会計基準が土台でなければ比較をしても意味がありませんから、会計基準は非常に重要な指標といえます。
3.まとめ
ここまで中小指針と中小会計要領の概要とメリットをみてきましたが、一番大事なことは、会計基準に基づいた信頼がもてる決算書を作成することで自社の経営状況を正確に把握し、今後の経営判断に活かすということです。
そして、10年、20年と経営基盤を磐石として、企業の発展につなげていくことが中小指針・中小会計要領の最大の求めるところとなります。
中小企業の会計基準につきまして、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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