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スタッフコラム

大津事務所
2024.03.25|経営

信用保証協会の仕組みと代位弁済の今後の動向について

コロナ禍の資金繰り支援策として2020年に導入された実質無利子・無担保融資(通称:ゼロゼロ融資)。2022年9月末に取扱いが終了し、2023年より返済が本格的にスタートしていますが、業績が改善ぜず過剰債務に陥った事業者の倒産が増加していることに比例して信用保証協会の代位弁済も増加しています。今回、信用保証協会の代位弁済の仕組みと今後の動向について説明します。

1.「信用保証協会の仕組み」

 信用保証協会とは、上場企業や大企業に比べ、資金調達手段の乏しい中小・零細企業の円滑な資金調達を支援するために設立された公的機関で、各都道府県に1組織、横浜・川崎・名古屋・岐阜には各都道府県とは別に、1組織ずつ独立した組織があります。業務内容は金融機関からの資金調達の際の保証業務の他に、創業支援や経営相談・ビジネスマッチング・各種セミナー開催など、事業者に対するサポート業務も行っています。

 信用保証協会の利用の流れは、①保証申込、②保証承諾、③金融機関からの融資、④返済という流れになります。基本的には取引のある金融機関を通じて、保証申込を行います。申込を受付けた信用保証協会は申込を受けた事業者の財務内容や経営状況を分析した上で、保証承諾の可否を決定します。融資を受ける際には信用保証協会に対し、財務内容や経営状況を分析した内容に基づく信用保証率(9区分)を適用し、保証料を徴収します。

万が一、事業者からの返済が滞った場合には、信用保証協会が事業者に代わり金融機関へ残りの融資全額を返済します。このことを「代位弁済」と呼びます。

 令和4年度(2023年3月)の保証承諾件数は約56万件、金額は約8兆2,100億円、令和5年度(2024年1月段階)の保証許諾件数は約50万6千件、金額は約8兆350億円と、前年同期に比べ増加しており、最終令和5年度(2024年3月)も増加する見通しとなっています。

2.「代位弁済とは」

 前段で、「代位弁済」について簡単に説明させて頂きましたが、本項ではより具体的に説明していきます。

前項で返済が滞った場合に代位弁済が実施されると記載しましたが、返済が数日~1ヶ月程度滞っただけでは、代位弁済にはならず、一般的には最終返済日から90日経過後から、金融機関が代位弁済請求を行って実施されます。

返済が出来なくなった事業者に代わり、金融機関へ残りの融資全額を代位弁済した後は、債権が金融機関から信用保証協会に移転します。その後は信用保証協会から事業者に対し、債権の返済を求められます。基本的には各信用保証協会から委託を受けた「保証協会債権回収株式会社(通称:保証協会サービサー)」が回収を担います。

 公的機関の信用保証協会から委託を受けたサービサーですので、過剰かつ無理な取立は行わず、基本的には事業者と実情や意向を汲み取った形での回収を行っています。ただ、代位弁済の際には国の中小企業信用保険金が投入されているため、債権の減免等は基本的に行っておらず、時間とコストをかけてでも元金を確実に回収するスタンスです。

3.「代位弁済」の今後の動向

 「代位弁済」の状況について、コロナ禍前の件数・金額とも前年比90%程度で推移していましたが、コロナ禍に創設された「ゼロゼロ融資」による資金繰り支援の影響で、令和2年度(2021年3月)は前年比71.7%とかなり低い状況まで抑制されています。しかしながら、それ以降は徐々に増加を続けており、令和4年度(2023年3月)は前年比144.7%、令和5年度(2024年1月段階)でも前年比148.7%とともに大幅に増加しています。この状況が続けば、国の中小企業信用保険金の投入額が増加するため、保険金支払維持のために国費が投入されることとなり、間接的ですが我々国民の負担も増加することも考えられます。

 国としては、ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎える2024年4月を前に中小企業の支援策を中小企業庁が中心となってまとめていますが、その中で強調しているのが「挑戦する中小企業の支援」という点です。コロナ禍も含め今までの金融支援策は中小企業全般的に支援の手を差し伸べていましたが、その施策が経営が実質破綻している企業(通称:ゾンビ企業)の延命に繋がっているとの批判もあり、挑戦意欲がある事業者の経営改善や再生支援を手掛るという方針を打ち出しています。

したがって、金融機関や信用保証協会も含め今後は挑戦意欲のない事業者への支援は減少すると考えられますので、代位弁済の件数及び金額も増加し、倒産などの法的整理に移行する企業が増加する見込みです。

4.まとめ

 物価高・人手不足・コロナ支援策の縮小などで、中小零細企業の倒産が増加し、今年度(2024年度)の倒産件数は9,000件に迫る勢いです。また、本年1月に発生した「令和6年能登半島地震」で、北陸地方の一部地域でライフラインが完全に復旧しておらず、北陸地方の広い範囲で経済活動への影響が出ており、従前からの人口減少・競合激化の影響に加えて、地震の影響が追い打ちになり、事業継続を断念するケースも発生しています。
代位弁済=倒産という事象ではないですが、代位弁済により資金調達が出来なくなることで、資金繰りが限界に達し、倒産などの法的整理となる場合が多いため、経営が実質破綻しているゾンビ企業の倒産が今後も増加すると考えられます。したがって、今後も代位弁済件数の動向に注目していく必要があります。

 

<参考>
一般社団法人 全国信用保証連合会 「信用保証実績の推移」
https://www.zenshinhoren.or.jp/about/cate04/
中小企業庁 金融課 金融審議会 事務局説明資料
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kinyu/011/02.pdf

 

(文責 大津事務所 田中)

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