1.競争力の確保には投資が必要
皆様ご存知の通り、企業の経営資源には「ヒト・モノ・カネ・情報」という4大経営資源があります。
コラムでお届けした「AIの力(情報)」や「人財の力(ヒト)」も勿論ですが、「設備(モノ)」と「資金(カネ)」も重要な要素となります。
しかし、大企業と比べて資金力が限られる中小企業では高額な設備投資を積極的に行うことが難しいという問題があります。商工中金の中小企業設備投資動向調査(2023年7月)によれば、2022年度の中小企業の設備投資の実績では、設備投資を実施した企業は全体の63.4%で、2023年度予想版も全体の53.4%と高水準にあります。
高水準の背景には、先のコラムのように「IT(AI)」や「人財」に資するような「情報化」「合理化・省力化」への投資が増加しており、中でもソフトウェア投資を行う中小企業の増加が比率を押し上げた一因とあります。
しかしながら、ソフトウェア投資は土地・建物・機械と比べて1件あたりの投資単価が低いことから比率の割に設備投資額が増えないという状態にあり、資金負担に制限のある中小企業は高額な設備投資を積極的に行えていないという事情が読み取れます。
【出典】
商工中金 中小企業設備投資動向調査
https://www.shokochukin.co.jp/report/investment/
2.補助金の動向
資金に限りのある中小企業は金融機関からの資金調達にて高額な設備投資を行うことが一般的ですが、なかには補助金を活用して資金負担を軽減しながら設備投資を行う中小企業もおられます。
設備投資に活用ができる補助金の代表的なものには「ものづくり補助金」があります。こちらでは「ものづくり補助金」の目的や動向をお知らせします。
【 ものづくり補助金 】
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」となり、雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する補助金になります。
直近の17次締切、18次締切では新たに2種類の枠が新設されましたので、抜粋してご紹介します。
省力化(オーダーメイド)枠の新設
人手不足の解消等を目的としてデジタル技術等を活用したオーダーメイド設備の導入などにより革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な投資を支援する枠になります。
製品・サービス高付加価値化枠の新設(3種の類型)
〈①通常類型〉
革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する類型になります。
〈②成長分野進出類型(DX・GX)〉
今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する類型になります。
〈③グローバル枠〉
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する類型になります。
従前より生産性や付加価値の向上に資する設備投資に利用できる「ものづくり補助金」ですが、昨今の人手不足への対応や成長性に資するような投資にも補助金が活用できるよう見直されています。
「省力化」「革新性(革新的)」がキーワードであると考えられ、商工中金の調査に於ける「省力化」に取り組む事業者が多いという結果にも共通点がみられます。また、「革新性(革新的)」に於いては、いずれの枠(類型)でも必要な要素となります。
【出典】
経済産業省 ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進補助金について
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono_shogyo_service.pdf
3.求められる革新性
では、補助金を活用する際に求められる「革新性」とは何を指すのでしょうか。
一般的にこの革新性とは、
①自社にとって新しい取り組みである
②同業他社と比べても先行している内容である
③地域内に於いても先進的なものである
上記の①~③の要素を満たすような新たな取り組みであることを指すと考えられます。
自社では新しい取り組みであっても、地域や同業他社で既に浸透しているような取り組みである場合などは革新性が認められない傾向が強いと感じ、これらの要素を満たすような取り組みを検討することが補助金、引いては新たに取り組む事業の肝だと考えます。
一方で補助金の審査では「適格性」「技術面」「事業化面」「政策面」などから総合的に判断される為、革新性もさることながら、補助金の主旨との合致や生産性の向上もポイントとなり、優れた設備を導入して「何を行うのか」が重要な要素であると考えます。
これらを具備するような内容を考え、計画を作成することが補助金活用の難易度を高くしていると考えられますが、新たに取り組む事業に於ける競争優位性を確保する為にも、内容を練る必要があります。
よって、補助金申請の副次的な役割としては、「自社の振り返り」についてしっかりと時間を割く事が挙げられると思います。
時間をかけて「現状の分析」を行うことで「目指す方向性」が見えてくるのではないでしょうか。
4.終わりに
今回は代表的な補助金である「ものづくり補助金」の動向についてご紹介しました。
補助金は時流に合わせながら既存の補助金を適宜に見直したり、補助金そのものの新設なども行われます。内容は様々であり、補助金別に求められる要素、検討しなければならない内容は異なります。申請する為の内容を考えることは大変ですが、補助金の活用を検討することでしっかりと時間を割いて自社を振り返る良い機会にもなります。
ものづくり補助金の計画策定のサポートはもちろん、「自社の強みや弱みなど、外部から判断して欲しい」などの
自社分析にあたっても、様々な知見をもって中小企業の皆様をご支援致しますので、お気軽にご相談下さいませ。
(文責:大津事務所 北村和哉)
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