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スタッフコラム

2017.11.09|経営

押さえるべきポイントは!? 目まぐるしく変動する社会福祉法人の会計基準

社会福祉法人は、旧民法に基づき、学校法人や宗教法人等と同様に公益法人から発展した特別法人であり、 「公益性」 と 「非営利性」という一般の企業とは明らかに異なる性格を併せ持っています。

その性格に併せて、外部環境の変化も大きく影響を受けることから、社会福祉法人の会計基準については、変更が繰り返されており、その都度対応が求められることとなります。

その中でも気を付けるべきポイントをご紹介させて頂きます。

1.会計基準改正の変遷

平成23年7月27日に発表された「新会計基準」は、社会福祉法人にとって今までにない変革を伴うものとなっています。制度改正の理解には、過去の経緯、歴史を理解すべきではないでしょうか。

 

そこで、過去に社会福法人の会計基準に影響を及ぼした事象について確認してみます。

 

「措置」から「利用」への制度改正
社会福祉法人制度は、昭和26年に創設された歴史のある制度でありますが、社会福祉法人にとって大きな契機となったのは、平成12年の介護保険法の施行及び同年の社会福祉事業法の改正に伴う社会福祉法の成立、いわゆる「措置」から「利用」への制度移行といえます。

 

これにより、株式会社やNPO法人等、多様な形態の供給主体が福祉分野に参入することで、社会福祉法人は福祉事業の中心的な担い手であるとともに、地域における多様な福祉ニーズにきめ細かく対応し、既存の制度ではなかなか対応できない方を支援するという位置付けに大きく変化することとなりました。

 

「旧会計基準」と「指導指針」の併存
上記、平成12年の社会福祉事業法の改正により、社会福祉法人における会計基準は、下記2つで併存していました。

 

  • 社会福祉法人会計基準「旧基準」
  • 指定介護老人施設等会計処理等取扱指導指針「指導指針」

 

「旧基準」は原則全ての社会福祉法人に適用され、「指導指針」については、介護保険事業を対象とした会計の処理方法であり、煩雑な会計体系である点や、2つの会計基準による計算結果が異なる点等が欠点として指摘されていました。

 

内部留保の問題
前述の通り、社会福祉法人は「公益性」と「非営利性」を備えていることから、以下のような取り決めが存在することから、内部留保が蓄積されやすい構造があり、社会的な批判を受けることもしばしばありました。

 

  • 設立時は、土地や建物といった施設について、寄付によりスタートすることが多い。
  • 社会福祉法人(特養)の内部留保については、株式会社のような営利法人と異なり、法人外への資金流出に加え、外部への配当も禁止されている。
  • 公共性が高く、健全性を高く維持することが行政指導で求められている。(利益の全てを安易に給与等で還元するわけにもいかない。)
  • 社会福祉法人を解散する際には、解散時の残余財産を他の社会福祉法人へ移管するか、国庫に帰属させるものと定められている。

 

「新会計基準」への移行
前述の通り、「旧基準」と「指導指針」という異なる会計基準の併存は、社会福祉法人間の状況を把握するに資するとは言えず、混乱を招くこととなっていました。

 

このような問題点を解決するべく、平成21年に厚生労働省から新会計基準の素案が公表され、その後 平成23年7月27日に 「社会福祉法人の新会計基準について」 および 「社会福祉法人会計基準」 が正式に公表されました。

2.新会計基準の骨子

平成23年に公表された「新会計基準」は、旧基準の適用も認められる移行期間を経て、平成27年4月1日開始の年度より、すべての社会福祉法人が移行することとなりました。

 

「新会計基準」の移行に際し、複数の注意点があるのですが、今回はその中でも大きく影響のある点をご紹介したいと思います。

 

3つの区分方法
法人全体での資産、負債等の状況を把握できるようにするため、会計単位は施設ごととせず、法人で一本の会計単位とすることとしました。ただし、公益事業及び収益事業については、別途特別会計として会計単位を分けることとしました。

 

一方で、施設ごとの経営状況を判読できるよう、「事業区分」、「拠点区分」、「サービス区分」の経理区分を会計単位の内部に設けることしました。

 

「計算書類等」の体系
社会福祉法人の会計を示す帳票一式の名称について、「旧基準」から「新会計基準」への移行時に「計算書類」から「財務諸表」へと変更され、さらに、平成28年度より、「計算書類等」という名称に変更が繰り返されています。

 

社会福祉法人においては、経理規程を設けなければならず、この名称の変更及び体系の変更があれば、都度経理規程の変更も行う必要があります。

 

【社会福祉法人会計基準】改正内容:平成28年3月31日号外厚生労働省令第79号
第三章 計算書類等
第一節 総則
(計算書類等)
第七条 社会福祉法人が作成しなければならない計算書類等は、次に掲げるものとする。
一 各会計年度に係る次に掲げる貸借対照表
イ 法人単位貸借対照表
ロ 貸借対照表内訳表
ハ 事業区分貸借対照表内訳表
ニ 拠点区分貸借対照表
二 各会計年度に係る次に掲げる収支計算書
イ 次に掲げる資金収支計算書
(1) 法人単位資金収支計算書
(2) 資金収支内訳表
(3) 事業区分資金収支内訳表
(4) 拠点区分資金収支計算書
ロ 次に掲げる事業活動計算書
(1) 法人単位事業活動計算書
(2) 事業活動内訳表
(3) 事業区分事業活動内訳表
(4) 拠点区分事業活動計算書
三 各会計年度に係る計算書類の附属明細書
四 各会計年度に係る財産目録

 
ワンイヤー・ルール
資産と負債に係る流動・固定の区分、資産の価値の変動等をより正確に財務諸表に反映し、財務情報の透明性を向上させるため、公益法人会計基準(平成20年4月)を参考に、ワンイヤー・ルールを採用することとなりました。

 

貸付金、借入金等の債権債務は、決算日翌日から1年以内に入金・支払の期限が来るものを流動資産・負債とし、1年を超えるものを固定資産・負債とする基準です。

 

リース会計
前述のワンイヤー・ルールと同様に、適正な財務諸表の作成を目的として、リース会計を導入することとなりました。今まで賃借料として費用処理するだけでなく、減価償却が必要なケースが出てきています。

3.まとめ

冒頭より述べていたように、社会福祉法人は、「公益性」 と 「非営利性」という大きな性格を持っています。それと同時に外部環境に左右される業種であり、目まぐるしい変化に会計も対応すべき点が多くあります。

 

我々ひかり税理士法人は、社会福祉法人の月次・決算業務を行うのみならず、このような変化に対応するべく、法人幹部の皆様から会計職員の皆様へ向け、勉強会の開催というかたちでのお手伝いも積極的にさせて頂いております。会計基準につきまして、少しでも疑問等ございましたらお問い合わせ頂ければと存じます。

※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。

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