1.査察・脱税って、具体的には、どういうことでしょうか?
とは言いましても、一般の方は、査察と言われても、少し古いですが、昔、映画であった「マルサの女」を見られた方で、「査察=脱税した会社を取り締まる」というイメージをお持ちである位ではないでしょうか?
そこで、まず、企業経営者の方であれば、ご存知の方も多いとは思いますが、一般的には、気になると思われる税務調査と査察の違いについて、ご説明させていただきます。
税務調査
税務署が行う所得税や法人税等に規定されている質問検査権により行う任意の調査(強制ではない)で、過去の申告が適正かどうかを確認し、税法に基づく『公平な課税』ができているかを目的とするものです。
よって、通常は事前に連絡があり、日程調整後、現地調査(対象の会社の事務所等)を行われ、そこで、申告した税額が少なかったと認定された場合には、その税額を納税をすることになり、加えて、加算税と言われるペナルティが、さらに課されます
査察
国税犯則取締法に基づく強制的な調査で、臨検、捜索、差押等の権限があり、悪質な『脱税を摘発』することが目的です。
よって、違法行為となるものですから、令状を持って、いきなり現地調査に来て、強制捜査されます。
当然、証拠が挙がれば、追加の納税だけでなく、加算税の中でも、一番重いペナルティである重加算税というが税金が課される行政処分だけでなく、告発、起訴されて有罪となる場合には、刑事罰が課されます。
脱税
では、脱税とは何かということが気になられる方が多いと思いますが、脱税とは、一言で言うと、『仮装、隠ぺい』を言います。
換言すると、あるものを隠したり、ないものをでっち上げたりすることです。具体的には売上をごまかすこと、存在しない経費をねつ造することなどがこれに当たります。
以上を把握して頂き、これからご紹介させて頂く平成29年度の査察の概要をご確認頂ければと存じます。
2.平成29年度の査察の概要
取組
平成29年度においては、現下の経済社会情勢を踏まえて、社会的波及効果の高い事案への取組を行っています。具体的には、以下の事案に積極的に取り組んだようです。
- 消費税の輸出免税制度などを利用した消費税受還付事案
- 自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案
- 国際事案
- 太陽光発電関連事案
- その他近年の経済社会情勢に即した事案
- 震災復興関連事案
- スーパーコンピュータの開発等を行う法人の脱税
- インターネットを利用したカウンセリング・セミナーなどを行う個人の脱税
上記①②の事案については、過去5年間で最も多くの告発を行い、上記③~⑤の事案についても多数の事案を告発したとのことです。詳しくは、以下のデータをご確認下さい。
[5年間の告発件数(※無申告ほ脱事案における括弧書は単純無申告ほ脱事案の件数)]
(週間税務通信No.3511 P.10より抜粋)
|
平成25年度 |
平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
平成29年度 |
消費税受還付事案 |
8件 |
5件 |
6件 |
11件 |
12件 |
無申告ほ脱事業 |
14件 (内0件) |
11件 (内2件) |
13件 (内1件) |
17件 (内6件) |
21件 (内8件) |
国際事業 |
16件 |
21件 |
28件 |
21件 |
15件 |
太陽光発電関連事業 |
- |
- |
2件 |
10件 |
7件 |
震災復興関連事業 |
2件 |
9件 |
3件 |
12件 |
2件 |
着手・処理・告発件数、告発率
査察調査に着手した件数は174 件(前年178件)で、昭和46年以後最小となりました。
平成29年度中に検察庁への告発の可否を判断し処理した件数163件(前年193件)、そのうち検察庁に告発した件数113 件(前年132件)、告発率69.3%(前年68.4%)でした。
脱税額
平成29年度に処理した査察事案163件に係る脱税額は総額で135億円900万円(前年161億600万円)、そのうち告発分113件の脱税額は100億円100万円(前年126億9,200万円)でした。 告発した事案1件当たりの脱税額は8,900万円(前年9,600万円)でした。
また、大口事案の上位3件は、以下のとおりとなります。
- 3億300万円(消費税・不正還付)
- 2億3,000万円(法人税)
- 1億5,200万円(法人税)
なお、10億円以上の事案は0件(前年1件)という結果でした。
業種
平成29年度に告発した査察事案で多かった業種は、
- 建設業 26 件
- 不動産業 10 件
- 人材派遣業 5件
となり、上位2業種に関しては、前々年度から変動していません。
査察事件の一審判決の状況
平成29年度中に一審判決が言い渡された件数は143件(前年100件)であり、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が8人(前年14人)に出されました。 実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独に係るものでは過去最高の懲役7年6月でした。
平成30年度の査察部門の取組
査察制度の一罰百戒の効果が最大限に発揮できるよう、現下の経済社会情勢を踏まえ、
とりわけ、平成29年に引き続き、
- 消費税受還付事案
- 無申告ほ脱事案
- 国際事案
のほか、社会的関心が高く、近年の経済社会情勢に即した分野で、悪質な脱税が伏在する可能性の高い事案など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案の積極的な着手・処理に取り組むとしています。
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