1.3つの質問
経営者の方は自社の資金の収支の流れについて把握はされてますでしょうか
3つの質問をします。
①借入金の返済は毎月いくらですか?
②債権・債務の入出金サイトは何日ですか?
③毎月、最も多い支払いがある日は”いつ”で”いくら”ですか?
まずは、おおよそで構いませんので、答えられますでしょうか。
上記に記載した「利益と資金収支は一緒ではありません」の延長にもなりますが、3つの質問は、会社の資金の流れを把握する上で最も大切です。
(解説)
①借入金の元本の返済は損益を把握する損益計算書には記載されません。借入金の元本は、儲けたお金(利益)から返すことになります。もし、毎月の利益が毎月の返済額以下だった場合は、たとえ利益がでていても会社の資金繰りは厳しくなります。
②売掛金・受取手形の入金はいつなのか、買掛金・支払手形の支払はいつなのかは、利益(損益計算書)からは全く分かりません。利益と資金収支のズレはここが最も大きい箇所になるため、資金繰りが厳しい場合、原因はここにある可能性が高いです。そのため入出金サイトは最優先で把握しておく必要があります。
③会社にとって、”最も多い支払いがある日”=”会社で最もお金がなくなる日”になります。一般的には、買掛金の支払日や給与日になります。利益があっても、その日にお金がなければ支払ができません。毎月の平均の支払金額がわかれば、その日までに現金・預金がいくらないとダメだということが分かります(運転資金が最低でもいくら必要か把握出来ることになります)。
実は、この3つの質問に答えられば、おおよその資金繰り表は作成できます。(試算表がきっちり出来ていることが条件です)
逆にこれを把握しないと、資金繰り表は作成できませんし、会社経営には必須の質問なので、おおよそでも不明な場合はすぐにでも調べることをおすすめいたします。
2.事業が不調なときこそ資金繰りが活躍
利益が出ていない原因にもよりますが、一般的には利益が出ていない会社は資金繰りも厳しいはずです。
会社にとって、「明日買掛金支払の資金が足りない!」といった状態はあってはなりません。しかし、資金繰りを作成していない会社はそういったことが、往々にしてありえます。そういったことがないように、資金繰りを把握するのは非常に大切です。
では、その他にもし事業が不調な場合、資金繰りを作成していればどのように役に立つのでしょうか。
・なぜ資金繰りが厳しいのか分析し、改善策を策定できます。
⇒資金収支について、どこに問題があるのかがわかるため、解決のため行動ができます。
例えば、「売掛金の回収サイトに問題がある場合は、短縮依頼をする」「在庫の仕入の見直し・処分の検討」など的確な解決方法が見つかります。また、資金不足金額もわかるため、「あとどれくらい売上・粗利が足りない」といった分析もできるのです。
・資金繰り計画を金融機関に提出し、資金調達・リスケジュールの資料にする。
⇒資金繰り表によって、事前にいつまでにいくら必要か把握ができます。資金不足のときは、金融機関に相談に行く必要があり、その際に資金繰り表を持っていくとスムーズに話せると思います。もし資金調達・リスケの場合は、最低でも2週間以上は時間がかかるため、出来る限り早めに相談に行くことが重要です。
3.儲かってるからこそ資金繰りは必要
繰り返しになりますが、「儲かっている(利益がでている)から資金繰りは必要ない」は間違っています。
利益と資金収支は一緒ではないということは、3つの質問で記載しましたが、3つともすべて把握して・問題なし!といった場合でも資金繰りは作成すべきです。
では、例えばこういったときはどうでしょうか?
■今期は非常に利益が出た。借入金も返済し資金も順調に増えている。来期は、今期の利益を設備投資に回そう!
・いくらまで設備投資に回せる?
・もし、金融機関に借入する際は、返済はいくらまでなら毎月余裕をもって返せる?
この質問をしっかりと解答するには、資金繰りや資金の流れを把握していないと答えられないと思います。
儲かってるからこそ、利益だけではなく資金繰りを把握することで、投資計画などが立てやすく、会社が無理なく成長できる予測が出来るのです。
4.最後に
資金繰りで重要なのは、未来についてです。但し、実績(過去)を把握していないのに未来の資金繰り表は作れません。まずは実績を把握してみましょう。
資金繰り実績は、会計ソフトやエクセルを活用して作成することが可能です。初めのうちは難しいと思いますので、顧問税理士に「作成支援」を依頼してください。「作成支援」というのは、顧問税理士に丸投げではなく、作成を手伝ってもらうという意味で、「自ら作成する」というところが大切です。会社にとって資金は毎日動くので、自ら作成することでリアルタイムで資金の流れを把握できます。毎日資金繰り表を作成する必要はありません、自ら作成することで資金繰りの仕組み・会社の資金の流れも深く理解出来るようになるので、おおよその資金繰りは頭の中でも出来るようになります。
資金繰りは、会社経営にとって非常に重要になります。資金繰りを多少の手間とコストをかけてでも”自ら作成”出来るようになることをおすすめいたします。ひかり税理士法人では、資金繰り作成支援のご依頼を多数いただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。
(文責:大津事務所 徳田)
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
税理士変更をお考えの方はこちら