1.働き方改革関連法改正の流れ
これまでにも、育児休業期間の延長、年次有給休暇の取得の義務化、時間外労働の上限規制、正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止など様々な法改正が行われ、今後も継続的に法改正が行われることでしょう。
<今後の主な労働法令改正・適用予定>
2022年4月 |
改正労働施策総合推進法 パワハラ防止対策義務化 中小企業への適用(大企業は2020年6月適用)
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2022年4月、同年10月、2023年4月 |
改正育児介護休業法 段階的な導入
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2022年4月 |
改正女性活躍推進法 101人以上の企業も女性活躍推進に関する情報公表の対象 |
2022年10月 |
年金制度改正法 改正101人以上の企業の短時間労働者への社会保険適用拡大 |
2023年4月 |
時間外労働60時間超の割増賃金率の引き上げ(大企業は2010年適用) |
2.中小企業が働き方改革に対応できない原因
2021年4月に中小企業に適用された改正パートタイム労働法(いわゆる「同一労働同一賃金」)など、法律が施行・適用されて時間が経過しているにもかかわらず、まだ法令に対応できていない中小企業もあると聞きます。
中小企業が働き方改革に対応できない原因として、以下のようなことが考えられます。
- 法改正で何をすべきかよくわからない
- 財務面への影響を懸念している
- 恒常的な人材不足、人材確保ができていない
(採用が困難、労働環境が悪く離職が多い、キーマンとなる優秀な人材が採用できない、等)
- 労働時間管理をしていない
(管理するための勤怠管理システムを導入していない、職場管理者のマネジメント不足、長時間働く人が偉いと考える風土、等)
- 労働者の生産性向上への意識が低い
(業務効率化のための業務プロセスの見直し・ITツールの導入ができていない、生産性が高いことが評価されない、等)
- 多様な働き方を受け入れる風土や仕組みがない
(育児や介護と仕事の両立がしづらい、女性の活躍、育成が実現しづらい、フレキシブルな働き方に対応していない、等)
- 不要な業務が排除されないままに、新しい業務が追加され、常に逼迫している
3.中小企業経営者は「人材」に関する問題の解決を最も重要な経営課題として捉えている
近年の働き方関連法令への対応や将来の人材確保への不安からか、中小企業においては、「人材」に関する課題が最も重要視されている経営課題です。業種別では、製造業72.7%、非製造業84.9%の企業が関心を示しています。
次点の「営業・販路拡大」に関する課題への関心は、製造業で63.1%、非製造業60.0%となっており、大きくポイントに開きがあります。
(経営課題の分類には、上記の他、「財務」、「生産・製造」、「商品・サービス開発」、「技術・研究開発」、「ICT活用」、「その他」の経営課題があります。)
※引用:中小企業庁 2020年版中小企業白書 第3部第2章第2節より
一方で、どう進めればよいか、誰に相談したらよいかと足踏みしている経営者様も多いようです。
4.「人材」に関する課題解決を推進するには
先述の「中小企業が働き方改革に対応できない原因」を解決する手段は、一つ、二つではありませんし、費用のかからない施策もあれば、費用がかかる施策もあります。短期間でできる施策もあれば、数年かけて取り組む施策もあります。
<施策の例>
- 労働時間管理に関するルールの見直し
- 労働時間管理が効率的、適切にできる勤怠管理システムの導入・運用
- 職場管理者への労務管理教育
- 評価制度の見直し(成果や生産性を評価、頑張りを報酬に還元)
- 後継者の育成、マネジメントの強化、権限の委譲
- 採用基準、採用手法の見直し
- 各種規程の改定・新設
- 業務プロセスの見直し、マニュアル等の標準化
- ITツールの導入による業務時間短縮、効率化
- 中堅・ベテラン社員へのリカレント教育
- 上記の施策を講じるための人材の確保、外部人材の活用
など
まず行うべきは、自社の「人材」に関する課題を抽出し、実現可能なスケジュールを設定することです。
この記事をご覧になった経営者様の中には、「自社は取り組んでいない」とご不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、中小企業様が「人材」に関する課題に対して具体的に実行されている企業様はまだまだ少ないのが現状です。
中小企業の「雇用・労働分野における取組状況」の統計でも、「テレワークの導入」、「女性の活躍推進」、「リカレント教育」等、多くの施策において半数以上の中小企業が「今後取り組む予定はない」としています。
※引用:2021年11月 公益財団法人 全国中小企業振興機関協会「ポストコロナ時代における規模別・業種別に見た中小企業の経営課題に関する調査報告書」より
中小企業において、自社のリソースだけで対応するのは困難と諦めることはありません。知識や経験のある人材を兼業・副業で受け入れたり、外部の専門家を経営パートナーにしたり、手段は様々です。
5.まとめ
事業の継続のためには人材の確保が必要ですが、「人材」に関する課題の解決に取り組まないことには、これからの時代において人材確保が実現できないことは明白です。また、労働人口の減少が見込まれる今後においては、労働生産性の向上も不可欠です。
コロナ禍においては事業を継続させることに筆舌に尽くし難いご苦労があったことと思います。弊社では、ポストコロナの時代に、苦難を乗り越え、将来の事業拡大に向けて継続的に「人材」に関する課題に取り組まれる中小企業様を全力でサポートします。お困りごとがございましたら、弊社HP(https://www.hikari-tax.com/contact)や弊社税務顧問担当者にご相談ください。
問題と思っていてもつい後回しにしがちな「人材」に関する課題への対処をこの法改正のタイミングに改めて考えてみてはいかがでしょうか。
(文責:京都事務所 熊洞)
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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