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2021.10.25|経営

事業承継税制の制度の内容や注意点など解説します!

事業承継を考える場合は、高額の贈与税や相続税を負担しなければならない点がネックになります。税制が改正されて中小企業の事業承継を後押しする仕組みができたものの、細かい要件が定められていてよく分からないと感じている人もいるでしょう。

事業承継税制をうまく活用すれば、さまざまなメリットがあります。この記事では、事業承継税制の概要や要件について解説します。

1.事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の代表者が自社の株式や資産を他者へ承継する場合、贈与税や相続税の支払いについて猶予または免除を受けられる制度です。中小企業は資金が限られているケースが多いですが、事業承継税制を活用すれば資金繰りがしやすくなります。

事業承継税制は、中小企業の事業承継をスムーズにする目的で平成21年の税制改正により設けられました。ただし、利用しにくい点があったため、平成30年にさらに改正されて「特例事業承継税制(特例制度)」が新設されています。新しくなった事業承継税制は、中小企業の事業承継を後押しする制度として期待されています。

2.贈与税と相続税の支払いが猶予・免除されるための要件

事業承継税制において贈与税や相続税の支払いを猶予または免除されるには、一定の要件を満たす必要があります。ここでは、基本的な要件について解説します。

 

詳細については国税庁のホームページに記載されているため、そちらもあわせて確認しましょう。

 

法人版事業承継税制)|国税庁

個人版事業承継税制)|国税庁

 

会社の要件

中小企業として事業承継税制を利用するには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」で定められている中小企業に該当する必要があります。具体的な要件は以下のとおりです。

 

業種

資本金

従業員数

製造業、建設業、運輸業他

3億円以下

300人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

 

 

また、以下の要件も満たす必要があります。

 

・非上場企業である

・資産管理会社(不動産賃貸業など)ではない

・医療法人や風俗営業会社ではない

 

人の要件

事業承継税制では、事業承継に関わる人についても要件があります。相続と譲渡のどちらかによっても要件が異なるため、注意が必要です。以下でくわしく解説します。

 

先代経営者

事業を他者へ承継しようとしている先代経営者は、以下の要件を満たしている必要があります。

 

・会社の代表者であり、承継時には代表を退いている

・承継の直前まで一族で50%を超える議決権を保有している

・後継者を除き、承継の直前まで一族の中の筆頭株主である

 

事業承継を行う場合、先代経営者はすべての株を後継者へ渡して代表を退かなければなりません。

 

後継者

後継者についても細かい要件が定められています。また、相続と贈与のどちらを行うかによっても、満たすべき要件は異なります。両方に共通する要件と、相続と贈与のそれぞれにおいて満たすべき要件は以下のとおりです。

 

共通する要件

 

・承継の翌日から5ヶ月が経過する日まで会社の代表者を務めている

・一族で50%を超える議決権を保有している

・一族の中で筆頭株主である

 

相続の要件

・相続直前まで役員であった

贈与の要件

・20歳以上である

・役員に就任してから3年以上が経過している

 

それぞれの要件の基準日は、相続時点または贈与時点となります。なお、後継者は必ずしも先代経営者の親族でなくても構いません。

 

事業承継後5年間の要件

事業承継してから5年間は特例が適用され、さらに以下の要件も満たし続ける必要があります。

 

・後継者が会社の代表権を保有し続ける

・承継時に雇用している従業員の8割以上を雇用し続ける

 

また、都道府県知事へ「報告書」、税務署へ「継続届出書」を毎年提出しなければなりません。5年が経過した後は、3年ごとに税務署へ「継続届出書」します。

 

要件に該当しなくなると、猶予されていた税の全額と利子税を納付する義務が発生します。ただし、やむを得ない事情がある場合は対象外です。

 

猶予から免除になるための要件

特例が受けられる5年間の経営承継期間が過ぎると、2つの要件を満たす必要はなくなります。ただし、この時点でも納税は猶予されているに過ぎません。納税の免除を受けるためには、さらに別の後継者へ事業を承継する必要があります。事業承継税制を使い、先代経営者として株式を贈与する方法です。

 

M&Aなどの株式売買は事業承継税制の対象にならないため、注意が必要です。

 

3.事業承継税制を利用する際の注意点

事業承継税制を利用するうえでは気をつけるべき点もあります。ここでは、具体的な注意点について解説します。

特例事業承継税制には適用時限がある

事業承継税制の特例には適用期限があり、利用できるのは令和9年(2027年)12月31日までです。適用を受けるためには、令和5年(2023年)3月31日までに都道府県庁に対して「特例承継計画」の提出が必要です。

事業承継税制による納税の猶予を受けられるようにするには、期限にあわせて適切に手続きを進める必要があります。早めに書類を提出し、適用期限にあわせて着実に事業承継を実行できるよう準備を進めましょう。

猶予を打ち切られたら一括で納税する必要がある

すでに触れたとおり、納税の猶予を受け続けるためには、一定の要件を5年間満たし続ける必要があります。しかし、景気の悪化やその他の事情により、5年以内に要件を満たせなくなる可能性もあるでしょう。

要件を満たせなくなると猶予が打ち切られ、もともと納税するはずだった税の全額と利子税を一括で納めなければならなくなります。そのような事態も考慮したうえで、事業承継税制を利用するか検討すべきです。

ただし、経営が悪化して会社を売却したり廃業したりする場合は、納税が減免されます。

4.【まとめ】

中小企業の事業承継を行う場合、事業承継税制を活用すれば贈与税や相続税の支払いを猶予または免除してもらえます。細かい要件があるため、それぞれを満たせるように準備を整えることが大切です。事業承継後も5年間は一定の要件を満たす必要があるため、後継者は注意する必要があります。事業承継税制をうまく活用し、スムーズに事業承継を進めましょう。

※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。

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