1.会計基準とは?
企業は損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成し、債権者や株主などの利害関係者に自社の業績や経営状態を逐一報告する必要があります。
しかし、各企業が自由なやり方で財務諸表を作成していたのでは、企業の経営状態を正しく把握できなかったり、他社との比較が難しかったりします。そうならないために、全国の企業で統一したルールが「会計基準」です。
2.中小企業向けの会計ルールは2種類
中小企業の実態に合うように決められた「中小会計指針」と「中小会計要領」という2つの会計基準があります。どちらも制定に公的機関がかかわっているところが共通していますが、特徴には多少違いがあります。
企業の規模や実態によってどちらの会計基準が向いているのかは異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで自社に合った基準を選ぶことが大事です。
3.中小会計指針とは?
中小会計指針は、日本公認会計士協会と日本税理士連合会、日本商工会議所および企業会計基準委員会の4団体によって2005年に発表されました。そのベースとなったのは、国際会計基準(IFRS)の影響を強く受けた大企業向けの会計基準です。中小企業向けの会計ルールとして簡易的ではあるものの、ある程度厳密な基準が設けられています。
基準がある程度厳格な分、一定水準以上の決算書類を作成できるメリットがありますが、頻繁に改定される国際会計基準との調整のために毎年大きな基準変更もあり、中小企業にとっては使いにくいところもあります。
後述する中小会計要領よりも厳密な基準なため、社内に企業会計の専門知識を持つ人がいたり、税理士や公認会計士などの専門家に相談できる体制になっていたりするのであれば、中小会計指針を導入するのに向いているでしょう。また、規模の大きい企業や、海外展開を検討している企業にもおすすめです。
4.中小会計要領とは?
中小会計要領は中小会計指針よりもさらに簡易的な会計基準として、2012年に制定されました。中小会計指針とは違い、税効果会計や組織再編の会計、資産除去債務については定めておらず、より規模の小さい企業の実態に合うものになっています。
伝統的に日本で用いられてきた企業会計の原則をもとにしているので頻繁に改定されることもありません。こうした理由から、現在では多くの中小企業で導入されている会計基準です。
5.中小会計要領を導入するメリット
前述した2つの会計基準のうち、特に中小企業におすすめなのが中小会計要領です。ここからは、中小企業が中小会計要領を採用するメリットについて具体的に、そしてさらに詳しく掘り下げて解説します。
自社の経営を正しく把握できる
自社の経営を正しく判断するためには、なによりもまず正確な情報が必要です。中小会計要領は、経理の人材が不足している中小企業にとって負担なく決算関連の書類が作成できる方法です。
この会計ルールに沿って作成することで、自社の経営状況を正確に表す損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成できます。状況を正しく把握できることで、他社と比較して経営を分析したり、正しい経営判断につなげたりすることが可能です。
:資金調達メリットも多い
中小会計要領を適用することで信用が増し、資金調達で有利に働く場合があります。例えば日本政策金融公庫による「中小企業会計活用強化資金」や「中小企業経営力強化資金」、民間の金融機関で融資を受けようとするときです。
中小企業会計活用強化資金においては基準金利での貸し付けに加え、一定の基準をクリアしていれば優遇利率での貸し付けも行われています。経営革新や異分野と連携した新事業を開拓する際に利用できる中小企業経営力強化資金についても、条件を満たせば特別利率の適用があります。
6.中小企業会計を活用しよう
中小企業が大企業向けの会計基準を採用すると、負担となってしまうことが多くあります。そこで制定されたのが中小企業向けの中小会計指針と中小会計要領です。
特に日本の伝統的なルールをもとに制定された中小会計要領は、簡易的ながら企業の経営状況を正しく把握できる会計基準です。その簡便さから現在では多くの中小企業に採用されています。
中小会計指針は国際会計基準の影響を受けた大企業向けの会計基準がベースであり、一定水準以上の決算書類が作成できる点が特徴です。会計体制がある程度整った、比較的規模の大きな企業に適した会計基準と言われています。
正しい経営判断ができるように、自社の実態に適した中小企業会計を選んで活用しましょう。
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