1.青色申告とは
確定申告とは、1年間の所得にかかる税金を計算し、税務署に納税額を報告する手続きのことです。青色申告は、確定申告を行う際に複式簿記に記帳する申告方法のこと。
青色申告の対象となるのは主に不動産所得や事業所得、山林所得がある人で、所轄の税務署から事前に承認を受けている必要があります。フリーランスや個人事業主のほか、サラリーマンであっても不動産収入がある人や副業によって収入を得ている人は青色申告の対象に。
また、事業所得や山林所得といった所得がない場合は、白色申告で確定申告を行うことが一般的です。青色申告と白色申告の違いについては次項でご紹介します。
2.青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の大きな違いとして挙げられることは、「制度の対象者」と「貸倒引当金」の2つです。それぞれについて以下で詳しくご説明します。
制度の対象者
冒頭でもお伝えしたように、青色申告は税務署への開業届の提出や、事前に青色申告の承認申請が必要になります。一方で、白色申告の場合は税務署への事前申請をする必要はなく、青色申告を提出していないすべての事業者が行う確定申告制度です。
貸倒引当金の処理方法
貸倒引当金とは、掛け取引を行う上で、貸し倒れに備えるための経理方法のことです。相手企業の倒産や売上不振などによって売掛金を回収できなくなることも。売掛金の未回収による共倒れを防ぐため、確定申告では年末時点で発生している債権の一部を「貸倒引当金」として経費に計上することが認められているのです。
貸倒引当金の処理方法は2種類あり、白色申告の場合は「個別評価」による計算を行う必要がありますが、青色申告の場合は売掛金や貸付金の総額の5.5%を上限として「一括評価」を行います。青色申告は、白色申告よりも貸倒引当金の計算が簡単であることに加え、計上額も増えるため、お得であるといえるでしょう。
3.青色申告のメリット
青色申告は白色申告よりも手間がかかる代わりに、さまざまなメリットがあります。青色申告のメリットは一体どのようなことがあるのでしょうか。
「青色事業専従者給与」を必要経費にできる
青色申告は、生計を同一にする家族への給与を「青色事業専従者給与」として必要経費にすることができます。白色申告も収入から専従者給与を差し引くことが可能ですが、配偶者は86万円、その他の親族は50万円までと上限金額が設けられているのです。しかし、青色申告は妥当性のある金額であれば上限金額がないため、節税につなげることができます。
最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告のメリットとして、最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられることが挙げられます。青色申告特別控除とは、青色申告で確定申告をする個人事業主を対象にした控除制度で、条件によって10~65万円の控除を受けることが可能です。
4.青色申告を利用する流れ
不備なく確定申告を行うためには、青色申告に必要な書類や手続きの流れについて理解しておくことが大切です。青色申告を利用する流れについてご紹介します。(※1)
(※1)参考:国税庁『No.2070 青色申告制度』https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
必要な書類
青色申告を利用する際に必要になる書類は以下の通りです。
確定申告書B |
申告書Bはフリーランスや個人事業主が対象になる。 |
青色申告決算書 |
事業の収入や経費を記入する書類。青色申告決算書は全4枚で構成されており、国税庁のホームページからダウンロード可能。 |
本人確認書類 |
マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどの写し |
源泉徴収票(給与所得が別途にある場合) |
給与所得や退職金、年金の支給があった場合、源泉徴収票の提出が必要。 |
各種控除関係の書類 |
社会保険料や生命保険料を支払った証明書を貼付することで、各種税金の控除措置が適用される。 |
青色申告を行う時期
1月1日から12月31日までの1年間に発生した所得の確定申告は、基本的に翌年の2月16日から3月15日までの間に行う必要があります。指定期間を過ぎても確定申告を行うことができますが、「無申告加算税」や「延滞税」が別途課されるため、注意しましょう。
①記帳する
まずは取引先との受注・発注記録や日々の収支を記帳しましょう。記帳方法は「簡易簿記」と「複式簿記」から選択することができますが、最大65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記を選択する必要があります。
②帳簿の内容を元に青色申告書を作成する
①で作成した1年分の帳簿を元に「所得税青色申告決算書」を作成しましょう。併せて「確定申告書」を作成することで、手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
③必要書類を税務署に提出する
必要書類をすべて準備できたら、所轄の税務署に提出します。提出方法は、税務署で直接提出、郵送、電子申請のいずれかを選択。先述したように、指定期間内に確定申告を行わなかった場合、延滞税を別途支払うことになるため、期間内に手続きを終わらせるようにしましょう。
5.青色申告に必要なことを理解して、不備のないようにしよう
今回は青色申告を行う上で必要なことについてご紹介しました。「青色申告は帳簿形式が複雑だから…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、確定申告で青色申告を選択することでさまざまな恩恵を受けられるのです。帳簿管理を正しく行うことで、自社の財務状況を把握できるようになり、より現実的な事業計画を立てられるといったメリットも。青色申告に必要なことを理解し、確定申告を行う際に不備のないようにしましょう。
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