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スタッフコラム

大阪事務所
2024.12.16|相続 税制改定

令和5年度税制改正の贈与税の実務上の取り扱いと今後の対策

 2024年も12月後半に差し掛かり、令和7年度税制改正の発表が近づいてまいりました。
今年は「103万円の壁」の撤廃による所得税の減税に非常に注目が集まっています。
このように税制の見直しが進む中、相続税や贈与税においても今後さらなる改正も視野に入る可能性があります。
今回は、令和5年度の税制改正による贈与税の選択肢の変更点を振り返り、現行制度を正しく理解したうえで適切な贈与が行われているか確認していきたいと思います。

1.令和5年の税制改正で変わった贈与の選択肢(おさらい)

贈与税の課税方法には、従来より暦年課税と相続時精算課税がありましたが、令和5年度の税制改正によりこれらの制度に変更が加えられていました。主な改正は以下のとおりです。

 〇暦年贈与
   贈与財産が相続時に加算される「持ち戻しの期間」がこれまでの3年から段階的に7年に引き上げられることになりました。
   ただし、この「持ち戻しの期間」が延長された4年間で贈与された財産のうち計100万円分については相続税への加算が免除されます。
 〇相続時精算課税 
   新たに基礎控除として110万円が設けられました。この110万円は暦年課税の控除と異なり、相続財産の加算対象にはなりません。
    
暦年課税では相続発生後に相続財産に加えられる贈与財産が改正により増加したため、そのメリットがやや薄れた印象です。

改正施行から1年が経過した現在でも、相続時精算課税を利用する方が増加している一方で、暦年課税を選択するケースも引き続きみられます。

2.贈与を行う目的は

贈与を行う目的は、贈与者の資産状況や年齢、相続人となる方々の構成や年齢によって大きく異なります。遺産分割や相続税負担に問題が無い場合、贈与を行う必要はないというのが一般的です。

一方で、特定の資産を特定の方に渡したい、相続税負担に備えたい、あるいは住宅資金や教育資金を早めに提供したいといったニーズに応じて贈与が利用されています。
税務のコンサルティングの観点からは、これらの思いを確認しつつ、保有資産と負債の確認、相続税負担の負担についてシミュレーションと贈与の必要性の有無を確認したうえで、贈与者の意向に沿った方針を決め、不必要な贈与や余計な税負担を避けることが重要です。

3.一般的に選択される贈与のケース

暦年贈与を利用するケース
 ・相続税計算時に加算対象とならない孫や子の配偶者への贈与
 ・若年のうちから計画的にコツコツと贈与を実行する場合
 ・教育資金や住宅取得資金の贈与を活用する場合

相続時精算課税を利用するケース
 ・将来的な値上がりが予想される資産(小規模宅地の特例対象外の資産)がある場合
 ・基礎控除110万円を活用した贈与
 ・贈与者が高齢(例:75歳以上)である場合(一度相続時精算課税を適用すると途中でやめることができないため、)    

もし令和5年度以前の贈与と同様の内容で令和6年度も実行している場合には、改正内容を踏まえた見直しが必要です。

4.まとめ

令和5年度の税制改正で、相続時精算課税に新たな基礎控除110万円が設けられ、それぞれの制度のメリット・デメリットを考慮しながら柔軟な選択が可能になりました。

一方、「103万円の壁」撤廃に向けた議論が進み、給与所得者にとって有利な制度変更が検討されていることから、相続税や贈与税の分野でも今後さらなる改正が行われる可能性があります。

今後は引き続き税制の動向を注視し、税制改正の都度、最適な贈与のあり方を検討していくことが求められます。

 

(文責:大阪事務所 衣川)

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