1.贈与とは
贈与の成立は民法という法律に以下のように規定されています。
① 贈与する側の「あげます」という意思
② もらう側の「もらいます」という意思
③ 贈与者からもらう側への無償による財産の移転
この3つの条件がそろった行為が本来(民法上)の贈与であり、この行為に対して課税される税金が贈与税になります。
なお、贈与税法という法律はなく、贈与税は相続税法に規定されています。
2.みなし贈与とは
本来の贈与は先ほどご説明しました①②③の条件を満たす行為を指しますが、例えば以下のようなケースはどうでしょうか?
【父親が息子に時価1,000万円の車両を10万円で譲ることを伝えて、息子が了承した】
この場合、たとえ10万円とは言え有償であるため③を満たさず、本来の贈与には原則当てはまりません。
しかしながら息子は父親から990万円相当の経済的価値(1,000万円-10万円)を無償で取得している実態があります。
本来の贈与にのみ贈与税を課税するという考え方を徹底してしまうと上記のような行為に対して課税することができません。
また、課税逃れのために贈与するつもりの財産を著しく低い価額で譲渡するといったことがまかり通ってしまいます。
そこで相続税法では、本来の贈与(民法上の贈与)でなくても、実質的に経済的価値が無償で移転した行為も(相続税法上)贈与と”みなして”贈与税を課すこととしています。
この取り扱いの厄介なところは本来の贈与ではないものも贈与とみなされてしまうことにあります。そのため当事者には贈与の意図が無いにも関わらず、相続税法上は贈与とみなされて思わぬ税負担を生じる可能性がある点です。
代表的なみなし贈与には以下のようなものがあります。
(a)満期保険金の受取人以外の者が保険料を負担していたケース(満期保険金受取時)
(b)財産を著しく低い価額で譲渡したケース
(c)借金の免除、肩代わりをしたケース
(d)同族会社に対して役員借入金を免除したケース
ただし、それぞれ以下のような場合にはみなし贈与の適用はありません。
(a) → 保険料の支払い資金を都度、贈与していたケース
(b)~(c) → 経済的利益を受ける者が資力を喪失しており、その扶養義務者がその者の借金返済に充てるためにしたケース
3.著しく低い価額とは
上記(b)にありますように財産を著しく低い価額で移転した場合にみなし贈与課税が発生します。
ではどの程度低い価額なら”著しく低い”と判断されてしまうのでしょうか?
実は具体的な基準を定めた規定はありません。
これは基準のギリギリを狙った租税回避をけん制する意図があると言われています。
実際の実務では、時価の80%程度を目安にしてみなし贈与の適用があるかを検討することが多いです。
ただしこれもあくまで目安であり、実際にはその価額になった経緯や当事者の取引意図などを総合的に勘案して判断することとなります。
4.終わりに
いかがでしょうか?
当事者には贈与の意図が無いとしても贈与税が課税されてしまうところが、みなし贈与規定の怖いところです。
令和5年度の税制改正により生前贈与加算の対象年数の延長、相続時精算課税制度に110万の非課税枠の創設など、贈与税のルールが大きく変わり、新しいルールに従った対策が必要となってきます。
次の世代への財産承継、贈与税や相続税についての最新の情報やその対策については是非、ひかり税理士法人へご相談ください!
(文責:大阪事務所 茂木)
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