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スタッフコラム

京都事務所
2022.04.26|相続

法定相続人に行方不明・未成年・判断能力がない方がいる場合の相続手続きについて

遺産分割協議を行うためには、法定相続人の全員が遺産分割の内容に同意していることが必要です。行方不明者、未成年者、判断の能力のない方は、相続人としての意思表示ができないため、分割協議が成立しません。
遺産分割協議が調わないまま相続税の申告を行う場合、各相続人が民法で定められた相続分に従って財産を取得したものとして相続税を計算して申告することになります。
また、遺産分割協議ができないと、不動産の相続登記ができないことにより売却・担保にできない、銀行口座の解約ができないといった問題が生じます。

そこで、それぞれのケースに合わせて、手続きをご案内しましょう。

1.相続人が行方不明の場合~失踪宣告・財産管理人の選任~

行方不明の相続人がいると、いつまでも遺産分割ができないという不都合が生じます。そこで、民法は「失踪宣告」と「不在者財産管理」の制度を設けて、これを利用することによって遺産分割協議を行うことができるようにしています。

 

(1)失踪宣告

失踪宣告は、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす制度です。

不在者(従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者)の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、または震災などで生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)には、利害関係者(配偶者や相続人など法律上の利害関係を有する者)が申立てを行い、家庭裁判所の審判によって失踪宣告が確定します。その後、10日以内に審判の謄本と確定証明

書を添付した失踪届を不在者の住所地の市区役所、町村役場に提出します。

失踪届が受理されてはじめて不在者が死亡したとみなされ、戸籍から除籍されます。これにより、遺産分割協議は不在者を除く、相続人全員で行うことができます。

 

(2)不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人は、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するための制度です。

不在者に財産管理人がいない場合、利害関係者が不在者の住所地の家庭裁所に申立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらいます。こうして選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で不在者に代わって遺産分割協議に参加し、署名・捺印を行います。

2.相続人が未成年の場合~特別代理人の選任~

相続人が未成年者(民法の改正により、2022年4⽉1⽇から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。)の場合、親権者である親が代理人として遺産分割協議に参加し、署名・捺印を行います。

しかし、その親も同時に相続人である場合には、親と子の間でお互いに利益が相反するので親が代理人になることができません。

このような場合、未成年者の住所地の家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行い、その未成年者と利益が相反しない人を特別代理人として、家庭裁判所の審判によって選任してもらいます。

特別代理人は、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加し、署名・捺印を行います。

3.相続人に判断能力がない場合の手続き~成年後見人の選任~

遺産分割協議が必要ではあっても、相続人に判断能力がほとんどなければ、これを行うことができません。例えば、夫が亡くなったときに、妻が認知症になっていたケースが挙げられます。

そのような判断能力が十分でない人を法律的に保護し、支えるための制度として「成年後見人制度」が設けられています。

この制度を利用するには、成年後見制度を受ける方の住所地の家庭裁判所に、本人が直接申立ての手続きをするか、または本人の配偶者や四親等内の親族、検察官、市区町村長などが申立ての手続きを行います。

 

成年後見人選定手続きの流れは次のとおりです。

①申立て準備

家庭裁判所で必要書類や説明書類一式を受け取ります。

 

②申立て

後見を受ける方の住所地の家庭裁判所に申立書、必要書類を揃えて提出します。

 

③調査

裁判所の職員から申立人、後見人候補者、本人が事情を聞かれます。(面接)親族に後見人候補者についての意見を照会することがあります。

 

④鑑定 本人の判断能力の程度を医学的に十分確認するため、医師による鑑定を行います。(費用5万円程度)※鑑定は省略される場合があります。

 

⑤後見開始の審判

家庭裁判所が後見の開始の審判をすると同時に、最も適任と思われる方を成年後見人に選任します。

 

⑥審判確定・登記

不服申立てがなければ、成年後見人が審判書を受領してから2週間後に確定します。

その後、法務局での登記に2週間程度かかります。

 

成年後見人には、申立書に記載された成年後見人候補者が必ずしも選任されるとは限りません。

家庭裁判所は、本人に多額の財産があるなど、親族間で療養介護や財産管理の方針に大きな食い違いがあるような場合には、親族以外の第三者の専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士など)を成年後見人に選ぶことがあります。

4.まとめ

判断能力のない方などが法定相続人にいる場合、相続に必要な手続きは、非常に複雑になる傾向があります。

少しでも不安がある方は、早い段階から専門家に相談されることをおすすめします。

当事務所では、相続税申告の支援だけでなく、生前の相続税対策・遺言書作成コンサルティングや、認知症になる前の対策として任意後見・家族信託などにも力を入れております。是非、一度ご相談ください。

※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。

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