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スタッフコラム

京都事務所
2024.08.21|事業承継

成長・拡大するM&A市場

 大手企業を中心とした業績拡大あるいは規模拡大を背景として、日本企業によるM&Aは増加の一途を辿っています。当コラム執筆時点でも、セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニエンスストア大手から買収提案を受けたことを明らかにしています。現時点では、提案を受け入れるかどうか、当事者間で協議を進めるか否かも未定のようですが、仮に買収が実現すれば、海外企業による日本企業の買収としては最大規模になると言われています。
このように、経営戦略・事業戦略の軸足は、新規事業開発やグローバル展開へと変遷し、それを実現する手段としてのM&Aは、日本企業にとっても事業経営の一つの選択肢となっています。また、特に中小企業においては、後継者不在を主たる背景として、事業承継対策の一手段としてM&Aを活用する事例が顕著に増加している状況です。

1.M&Aとその手法

 M&Aとは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」を略した言葉で、企業や事業の経営権を移転させることを言います。
経営権を譲り渡す側(売り手)は、後継者問題や創業者利益の確保、ノウハウの承継等を目的に行い、譲り受ける側(買い手)は事業拡大の他、人的資源や技術力の確保等を目的にM&Aを行います。
一般的に、M&Aは「買収」「合併」「会社分割」の3つに分類することができますが、その9割以上が「買収」スキームによるものです。
中小企業庁が、令和6年6月28日に公表した『事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について』によると、この10年間で、M&Aにより子会社・関連会社を増やした中小企業は増加の一途を辿っており、国内の中小M&Aの実施件数は、2022年度と2014年度で以下のような状況にある旨言及されており、合計での比較は15倍超となっていることが分かります。

■2022年度 5,717件
内訳:事業承継・引継ぎ支援センターを通じたもの 1,681件、民間M&A支援機関を通じたもの 4,036件
■2014年度 362件
内訳:事業承継・引継ぎ支援センターを通じたもの 102件、民間M&A支援機関を通じたもの 260件

2.M&Aと税務

◇株式譲渡価格に対する課税問題
同族者間やグループ会社間での株式譲渡は、その価格が恣意的に決定されるリスクがあることから、税法上規定された方法で評価した株価で譲渡することが望ましいと言えます。仮にその方法によらずに譲渡すると、税務上は、寄付金や贈与と認定され課税される可能性があります。しかしながら、利害の相反する第三者とのM&Aにおいては、価格が恣意的に決定されるリスクがほとんど無いため、当事者同士の交渉により決まった価格が税務上も時価として認められます。

 

◇譲渡す側(売り手)側への課税
株式譲渡を行った場合は、株式を譲渡して得た利益(譲渡所得)に対して課税されます。
この点、株主が個人の場合は所得税(申告分離課税により譲渡益の20.315%)が課され、法人の場合は法人税等が課されます
(法人税等には、法人税のほか、法人住民税及び法人事業税等が含まれます)。

 

◇譲受ける側(買い手)側への課税
株式譲渡に課税が発生するのは株式を譲渡する買収対象会社の株主であり、基本的に、買い手側には課税は発生しません。

3.最後に

 上述の「2.M&Aと税務」で触れたように、M&Aは通常、「当事者同士の交渉により決まった価格」で株式譲渡契約書(SPA)を締結し、その後、実際に対象株式を譲渡することが一般的ですが、「決まった価格」を適切に算定するために行うのが、デューデリジェンス(以下、「DD」という。)です。 基本的にM&Aでリスクを負うのは買い手であり、買収対象会社のリスクを的確に把握するために、DDは必須の最重要手続です。 DDの大きな目的は、買収対象会社の抱えるリスクの抽出にあり、公認会計士や税理士、弁護士等の専門家による入念な精査が必要不可欠です。買い手は、それら専門家によるDDでの分析結果を通じて、買収によるシナジー効果とリスクを明確にし、リスクテイクを図りながら、シナジー効果を最大限に発揮する、これがM&A成功の秘訣となります。 この点、我々、ひかり税理士法人では、M&Aに精通する多数のプロフェッショナルが存在することから、株式譲渡に係る課税問題はもちろん、財務及び税務DDにつきましても、いつでもご相談・お問合せ下さい。

 

 

(文責 京都事務所 山田 利博)

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