1.事業承継とは
事業承継は「親族内事業承継」「親族外事業承継」「M&Aによる事業承継」のいずれかの方法で行われることが一般的です。それぞれの方法について詳しく解説します。
親族内事業承継
親族内事業承継とは、経営者の子供や兄弟といった親族へ事業を引き継ぐことです。第三者への承継に比べ、金融機関や資金提供者からの援助が得やすかったり、早い段階から後継者教育をできたりするメリットがあります。一方で、事業後継者以外の親族との間で財産分与に関するトラブルが起きることもあるため、注意が必要です。
従業員承継
従業員承継とは、自社の従業員に事業を引き継ぐこと。自社の事業や業界について深く理解している優秀な人材を社内から選べるため、事業拡大や利益好転を目指す方におすすめです。しかし、従業員承継は親族や従業員の理解を得るまでに時間を要することもあります。従業員承継を検討している場合は、より早い段階から準備に取り掛かると良いでしょう。
M&Aによる事業承継
M&Aによる事業承継とは、社外の第三者に対して株式譲渡や事業譲渡(M&A)によって事業を引き継ぐことです。東京商工リサーチが実施した調査によると、中小企業の半数以上が「後継者未定」と回答しています。(※2)
M&Aによる事業承継を行うことで、親族や社内に適任者がいない場合であっても社外に候補者を募ることが可能に。しかし、場合によっては譲渡の条件と合致する売却先を見つけることが難しいこともあるため、他の承継方法と同時に進めると良いでしょう。
(※2)株式会社東京商工リサーチ『2020年「後継者不在率」調査』https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20201113_01.html
2.事業承継の種類
中小企業庁が発表した『事業承継ガイドライン』によると、事業承継を検討している企業の約30%が後継者の育成に5~10年かかると見込んでいます。こうした背景から事業承継を円滑に行うためには、事前準備が重要に。ここでは、事業承継をスムーズに進める方法についてご紹介します。(※3)
(※3)中小企業庁『事業承継ガイドライン』https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf
税理士に相談する
企業の中には記帳や財務諸表の作成などを顧問税理士に依頼している場合も多いのではないでしょうか。顧問税理士であれば会社の業績をすでに把握しているため、税務と経営の観点からアドバイスを受けることが可能です。事業承継は贈与や相続といった税務関係の知識も必要になるため、税理士に相談することで同時に節税対策も行えるでしょう。
事業の後継者を育成する
事業承継は後継者を見つけて終わりではありません。事業承継後も会社を成長させ続けるためには、後継者の育成が重要に。具体的な育成方法として、業務の引継ぎといった表面的なことのほか、主要部署間のジョブローテーションや経営幹部としての参画、社外セミナーへの参加などが挙げられます。
後継者育成で大切なことは「支配的」ではなく、「支援的」なリーダーシップです。後継者候補とのコミュニケーションを通して、本音で話せるような信頼関係を築くことが、会社を担う次のリーダーを育てる第一歩になります。
事業承継計画をしっかりと行う
事業承継計画とは、経営計画や事業承継を行う時期、事業承継の実行に向けて必要なことをまとめる作業です。先ほどもお伝えしたように、事業承継は計画から実行まで数年かかることが一般的。その間の売上高や営業利益、株式関係、後継者の教育などについて細かく計画を立てることで、事業承継の準備を着実に進めることが可能になります。
3.事業承継は税務知識と経営視点を兼ね備えた税理士に依頼しよう
今回は事業承継の種類やスムーズに進めるための方法などについてご紹介しました。多くの中小企業の経営者が抱える悩みの一つが、後継者問題です。事業承継を行うことで、自社の現金や預貯金、不動産といった個別資産だけではなく「事業」そのものを後継者に引き継ぐことになります。事業承継は実行までに時間がかかり、複雑な知識が求められることに。税理士に事業承継を依頼することで、税制優遇措置や控除などを利用しながら効率的に進めることができるでしょう。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
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