1.電子化と収入印紙
収入印紙が必要となるのは印紙税法で定められた課税文書に限られています。
ここでいう課税文書とは、印紙税法で定めた『課税物件表』の『課税物件欄』に掲げる『文書により証されるべき事項』が記載され、かつ、『当事者間において課税事項を証明する目的で作成された文書』のことをいい、非課税文書として収入印紙が必要ないとされる文書以外の文書をいいます。その代表的な一つが領収書です。
ポイントは、この場合の文書(つまり紙)には電磁的記録は含まれないとされることです。つまり、自分が文書(紙)である必要がない場合で、かつ、相手側においても文書(紙)である必要がない場合は、以下で紹介する方法により収入印紙を貼らなくてもよいこととなります。
2.領収書の場合
領収書の記載金額が5万円以上の場合は記載金額に応じて収入印紙が必要です。ただし、電子的に発行された領収書は収入印紙が必要ないので、ウェブサイトで領収書を発行する場合、あるいは、メールやFAXで領収書を送信する場合は収入印紙は必要ありません。
なお、対価である金銭を相手から直接受け取らないクレジットカード決済で発行する領収書は文書であっても、もともと収入印紙は不要です。
3.支払手形の場合
支払手形の金額が10万円以上の場合は、記載金額に応じて収入印紙が必要です。これに対して支払手形に代わる支払い手段として導入が進む電子記録債権は収入印紙が必要ありません。この電子記録債権の利用には金融機関などへの一定の手数料が必要となりますが、収入印紙を含めた支払手形発行にかかるトータルのコストよりも低いとされます。
また、政府は、2026年までの支払手形の利用廃止、全面的な電子化の方針を示していることもあるので電子記録債権への早期の移行をおすすめします。
4.契約書の場合
売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、工事請負契約書、工事注文請書などの契約書については、その文書の種類や記載金額に応じて収入印紙が必要です。ここ数年普及が著しい電子契約は文書を作成したことにならないため収入印紙は必要ありません。
なお、電子契約書を利用するケースでは、自社システムではなく電子契約システムを提供している事業者に利用料を支払うのが一般的なので、導入にあたってはその利用料と印紙代、その他業務の効率化を比較検討する必要があります。
5.定款の場合
株式会社を設立する場合に必要な定款は資本金の額に応じて収入印紙が必要です。しかし、電子定款による場合は収入印紙は必要ありません。
自力で会社設立する場合はともかく、会社設立を司法書士に依頼する場合は電子定款が標準的なので電子化を意識する必要すらないのかもしれません。
6.まとめ
収入印紙を文書の電子化という側面で紹介してきました。1件1件は少額な印紙代であっても件数が多くなると相応の金額になります。コスト削減という観点から文書の電子化を検討してはみてはいかがでしょうか。
(文責 東京事務所 畠山)
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