1.リバースチャージ方式とは「支払った側」が消費税を納付すること
私たちが商品やサービスを購入した際に支払っている消費税。
「税金を払っている」という感覚はあるものの、実際に税金を国に納付しているのは「商品を売った側」です。
そして「リバースチャージ方式」の「リバース」は日本語に訳すと「反対の」を意味します。
つまり「リバースチャージ方式」とは、「商品を売った側」とは反対の「商品を購入した側(支払った側)」が消費税を国に納付するということです。
リバースチャージ方式の適用対象となる取引
導入の経緯については後述しますが、リバースチャージ方式は適用対象となる取引が決められています。 まず1つは、国外の事業者が他の事業者に対してインターネットを通じたサービスを提供する場合で、具体的にはインターネット広告配信などのサービスが挙げられます。 一方、SNSやYouTubeなどの動画配信サービスは事業者以外の人も利用するため、「事業者向け」には該当せず、リバースチャージ方式の適用対象にはなりません。 もう1つは、国外事業者が行う演劇やその他の一定の役務を提供する場合で、例えば海外のアーティストやスポーツ選手が日本国内でテレビ出演をした場合などが挙げられます。
2.リバースチャージ方式導入の背景
リバースチャージ方式はいつから、なぜ導入されるようになったのでしょうか。
2015年4月の消費税法改正までは、リバースチャージ方式による課税方式は導入されていませんでした。
導入に至った経緯としては、以下のような消費税を巡るいびつな状況が大きく関係しています。
わかりやすい例として挙げられるのが、電子書籍です。以前までは、海外の事業者が販売している電子書籍には消費税はかかりませんでした。
しかし、同じ電子書籍を日本の事業者が販売しようとすると、国内の事業者であるため消費税がかかってしまいます。
そうなると当然消費者にとっては消費税分安く購入できる電子書籍の方を選びますので、国内事業者にとっては不利な状況となるわけです。
そのため、ある企業では海外の企業から配信するという形で、消費税がかからない状況で電子書籍の提供を始めました。
このように、同じ商品であるにも関わらず国内の事業者から購入すると税金がかかり、海外の事業者から購入すると税金がかかりません。
このいびつな状況を打破するべく導入された課税方式が、リバースチャージ方式なのです。
上記で触れた電子書籍のほか、音楽配信サービスやインターネット広告の配信サービス、クラウドサービスなどにもリバースチャージ方式が適用されます。
3.リバースチャージ方式の経過措置
ここまでリバースチャージ方式の概要などを説明してきましたが、現在は「当分の間」という条件付きで経過措置としての例外が設けられています。
その内容としては、仮に国外事業者より事業者向けの電気通信利用役務の提供を受けたとしても、簡易課税制度が適用される事業者や、一般課税による申告で課税売上割合が95%以上の事業者についてはリバースチャージ方式による申告をする必要がないというものです。
つまり、リバースチャージ方式については現時点において多くの中小事業者には影響がないといえるのですが、これはあくまでも「当分の間」という条件付きです。
そのため、今後本格的に適用される場合に備え、契約相手が国内の事業者なのか国外の事業者なのか、また、対象となるサービスが事業者向けなのか、それ以外なのかという点は常に注意をしておく必要があるでしょう。
また、消費税法改正による総額表示義務についてもしっかり押さえておく必要があります。
4.本格導入に向けて内容の把握を
リバースチャージ方式については現在経過措置が取られており、多くの企業にとってはあまり影響がない課税方式といえます。
とはいえ、電子書籍や音楽配信サービス、インターネット広告の配信サービス、クラウドサービスなど、該当する事業者は少なくないため、注意が必要です。
仮に申告漏れがあった場合には、本来納付すべき税金に加え、延滞税や加算税なども追加で納付します。
リバースチャージ方式の対象事業者は、しっかりと内容を把握した上で、不明な点は税理士などに確認されることをおすすめします。
※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。
税理士変更をお考えの方はこちら