1.そもそも計上とは
まずは計上とは何かについて知っておきましょう。
経理会計業務などにおいて「予算に計上する・売上に計上する」などといわれます。
計上とは売上収益や仕入代金、その他の取引の金額を、全体の計算に加えるために帳簿などに記入し決算書に反映させることです。
この取引を内容ごとに振り分ける作業を「仕訳」といい、それらの項目を「勘定科目」といいます。
「売上」「仕入」「消耗品費」などの勘定科目を用いた仕訳を行い勘定し、企業全体が生み出す金額を算出します。
2.売上の計上時期はいつ?
発生主義とは
発生主義とは「取引が発生した時点で計上する」という考え方です。例えばある材料を注文し支払いを月末にするとした場合、この時点で会計仕訳を実施します。
またこの材料を販売した側は発生主義に基づくと、この取引が成立した時点で売上を計上することになります。つまり実際の収支に関係なく計上するということです。
しかしその取引(注文)がキャンセルになってしまうことも考えられます。この場合売上として計上したものは架空計上になってしまいます。
したがって売上に発生主義を適用することはできません。
通常、発生主義は光熱費・テナント料などの経費に適用されることが多いです。
実現主義とは
「取引後、現金・売掛金・受取手形などを受け取った時点で計上する」との考え方が実現主義です。つまり「取引を行う」「現金等価物(現金、売掛金、物など)の受領が行われる」この2点をもって計上するという考え方です。
例えばA社がB社へある商品を発注し、B社がA社へ納品、A社がB社へ支払いを行ったとします。この時点でB社は収益が確定するため、実現主義に基づき売上として計上します。
発生主義では現金の出入りは加味されていません。したがって収益は実現主義、経費は発生主義に基づき計上されます。
現金主義とは
現金主義とは「現金を受け取った時点で計上する」という考え方です。例えばある商品を売った場合に、商品代金を現金・預金として受領した際に売上として計上することです。
つまり実際のキャッシュの動きがあった場合に、売上を計上することになります。
したがって取引成立後の支払いが未実施の場合は、売上として計上されません。そのため基本的に企業会計において現金主義は認められていません。
3.新収益認識基準(収益認識に関する会計基準)とは
先述のように売上計上のタイミングは「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」とのみ定められた実現主義に基づくものでした。
この実現主義の定義は統一されておらず企業や取引内容によって「出荷基準」「納品基準」などいくつかの基準が設けられています。
また同じ業種でも企業によっても異なることがあり、そのため同じ業種であっても財務諸表の内容に差異が生じ、正しい企業評価が難しくなることが問題視されていました。
そこでこれらの考え方を統一するために国際会計基準となる「国際財務報告基準(IFRS)に沿って作成し公表されたものが新収益認識基準です。
新収益認識基準では「履行義務を充足した時に収益を認識する」と定められています。ここでの「履行義務」とは「サービスを提供する義務」のことです。
充足とは、その義務が履行されることを指します。つまり新収益認識基準とは「取引が成立しサービスを提供されたときに売上を計上する」という基準です。
新収益認識基準は2021年4月1日以後に開始する事業年の期首から適用され、すでに大企業では強制適用です。
適用対象外の取り引き
新収益認識基準には一部対象外となるものがあります。舞台的には以下のとおりです。
- 「金融商品会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
- 「リース会計基準」の範囲に含まれるリース取引
- 保険法における定義を満たす保険契約
- 同業他社との交換取引
- 金融商品の組成又は取得において受取る手数料
- 「不動産流動化実務指針」の対象となる不動産の譲渡
引用元:「収益認識に関する会計基準」への対応について~法人税関係~|国税庁
詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。
4.新収益認識基準における売上計上のタイミング
ここからは実際に、新収益認識基準ではどのタイミングで売上を計上すればいいのかを解説していきます。
新収益認識基準では以下の5つのステップに沿って、売上が計上されることになります。詳しく見ていきましょう。
契約を識別する
最初のステップは契約の内容の確認です。契約に含まれる提供されるべき商品・サービス内容を把握しておきます。
履行義務を把握する
サービス内容における履行義務を把握します。例えば納品する業務用の機器に「納品する指定台数」「納品後の保証・アフターサービス」があればそれらが履行義務です。
この場合指定台数を納品した時点で充足するもの、一定期間を経て充足するものが存在します。
取引価格を把握する
取引価格を把握します。商品の販売価格、保証やアフターサービスなど履行義務に含まれるものすべてを算定します。
取引価格を配分する
上記の例のように履行義務に複数のサービスが内包される場合、それぞれの取引価格を配分します。
収益の認識を行う
履行義務が充足した時点で収益を計上します。上記の例のように「商品の納品」「保証・アフターサービス」と複数の履行義務がある場合はそれぞれ異なるタイミングで充足されるため、それに伴い売上計上のタイミングも異なります。
5.まとめ
この記事では新しく導入された「新収益認識基準」について解説してきました。2018年3月に改められたこの新ルールは2021年4月から大企業では強制適用となっています。
現在中小企業は任意適用となっていますが、大企業と取り引きがある場合は影響を受ける可能性があるでしょう。もし新収益認識基準を適用するとなると会計処理を変更しなくてはいけないケースも発生します。
今回の記事を参考に「新収益認識基準」の知識を深めておくのがおすすめです。
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